2021 Fiscal Year Research-status Report
Petrological study on stone materials and their deterioration in the Khmer monuments including the Angkor monuments
Project/Area Number |
19KK0016
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 一太 筑波大学, 芸術系, 准教授 (40386719)
齋藤 有 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (60469616)
高谷 雄太郎 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員(研究院准教授) (10636872)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | アンコール遺跡 / クメール遺跡 / 石材 / 劣化 / 石切り場 / サンボール・プレイ・クック遺跡 / 硬砂岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は新型コロナウイルスの世界的な感染が続いたため、カンボジア等において現地調査を行うことができなかった。したがって、2021年度では今までに採取し、まだ分析を行っていなかった遺跡の石材・劣化材に対して各種分析を行った。 具体的には、前アンコール期の寺院であり、クメール遺跡としては珍しく建築材として玄武岩が使用されているタ・ケオ州のAshram Maha Rosei寺院とコンポンチャム州のKuk Preah Theat寺院の玄武岩、並びに、その供給源を探るために採取してあったメコン川沿いのコンポンチャム州およびトボンクムン州の玄武岩に対し、偏光顕微鏡による観察、帯磁率測定、全岩化学組成分析、EPMAによる鉱物(かんらん石、輝石および長石)化学組成分析およびNd-Sr同位体比測定を行った。これらの分析・測定の結果、Ashram Maha Rosei 寺院とKuk Preah Theat寺院の玄武岩は、岩石組織も含めていずれの分析・測定結果においても似た傾向が認められ、供給地が同じである可能性が極めて高いことが分かった。また、両寺院に使用されている玄武岩はコンポンチャム州で採取した玄武岩と似ており、トボンクムン州の玄武岩とはかなり異なっていることから、両寺院の玄武岩はコンポンチャム州の玄武岩岩体から採取されたことが推測される。また、両寺院はメコン川あるいはその支流の近くに存在していることからメコン川を利用して運搬されたことが推測された。しかしながら、その石切り場自体は未発見であり、今後の課題として残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的感染が続いたためクメール遺跡に対する現地調査を行うことができなかった。計画ではカンボジアのサンボール・プレイ・クック遺跡の都城区における建造物の建造順序の推定を行うとともに寺院区におけるレンガ材の塩類劣化に関する研究を行う予定であったが、海外渡航ができなかったため、これらの研究を実施することができず、今までに採取していた試料を用いて分析・測定を行うにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度では、2021年度に分析を行ったAshram Maha Rosei寺院およびKuk Preah Theat寺院に使用されている玄武岩の石切り場の調査を行う。また、前アンコール期の遺跡であるサンボール・プレイ・クック遺跡の都城区において未調査であるレンガ造建造物に対し携帯型蛍光X線分析装置による化学組成分析を実施し、建造時期を明らかにするとともに同遺跡の寺院区においてレンガの劣化に係わる析出塩類の同定を行うとともに、サンプリングを行い、SrおよびS同位体比測定を行うことにより塩類の起源物質の推定を行う。これらに加え、アンコール遺跡の建造時に用いられた鉄工具の鉄の起源を明らかにするためにクレン山東側にあるとされている鉄鉱山の調査を実施する。さらに、クレン山山頂に存在するマヘンドラパルヴァータの寺院群に使用されている石材及びレンガ材の調査を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的な感染により2021年度は現地での調査を全く行うことができなかったため、多額の余剰金が生じた。2022年度ではコロナウイルスの感染が収まることを前提に3回程度の現地調査を行い、今までに計画を立てていた調査を実施する予定である。
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Research Products
(3 results)