2019 Fiscal Year Research-status Report
Exploratory research on Restructuring of "Urban Night" in Europe
Project/Area Number |
19KK0020
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
池田 真利子 筑波大学, 芸術系, 助教 (10814767)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | ナイトライフ街区 / 音楽 / ヨーロッパ / 都市政策 / 若者 / クラブ / ライブベニュー / 若手研究者探索的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は夜に関する国内外における学術的研究の強い要請を踏まえ,「都市の夜」の実態の解明(夜間経済の発展・規制の強化に関する社会科学的アプローチ)と理論的探求(都市の闇や夜の意味・経験の変化,外出行為の変化に関する人文学的アプローチ)を通じて「都市の夜」の研究を飛躍的に発展させるため,海外共同研究者の研究機関に出赴き,探索的共同研究を行うことを目的とする。そのために,夜間経済の先行研究や事例報告の存在するイギリス(ロンドン)・ドイツ(ベルリン)・オランダ(アムステルダム)の各都市の「ナイトライフ街区」に注目し,フィールド調査によって当該街区に関する定量・定性的データを収集し「都市の夜」の実態の解明を行う。次いで,人文地理学・社会地理学・社会学の枠組みにおいて夜そのものに関する理論的探求をインターディシプリンに行う。 国際共同研究の開始に伴い,本研究全体の目的と計画,それぞれの目的に応じた研究方法を話し合うため,共同研究者と2019年10~12月にオンラインで打ち合わせを継続的に実施した。その結果,2019年度ベルリン市,2020年度アムステルダム市・ベルリン市(補足調査),2021年度ロンドン市・アムステルダム市(補足調査)で調査を実施することを決めた。なおベルリン市に関する実態調査は,研究代表者・共同研究者双方が現地調査の経験と被調査者ネットワークを有しているためである。 なお,2019年にUCL都市ラボラトリーが,ライデン大学(オランダ)やロイファナ大学(ドイツ)とヨーロッパ地域における「夜の空間:移民,文化,統合」の国際共同研究(人文学)を開始しており,またリスボン大学ISCTE(共同研究者と発表参加予定)の主催でヨーロッパを軸に夜の学術的知見が分野横断的に集められるなか,引き続き,夜の理論および実態研究を,ナイトライフ街区・都市政策・音楽を軸に進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度はドイツ(ベルリン)調査を10月末から11月初旬に敢行し,予備調査・今後の調査に係る有識者との意見交換を行った。調査期間中には校務にてブランデンブルク工科大学にて「ベルリンの廃墟と音楽ライブ空間の生成」というテーマで講義を行ったが,それを契機として当該大学の教員や同大学院生ら(主として建築学・ヘリテージ学)と議論を行う機会を得られた。なお,その繋がりで,ベルリンの研究者や文化実践者と繋がりが生まれ,被調査者の選定において大きな足掛かりを得つつある。 また研究協力者とは,10月以降,1週間~2週間に1回(1~2時間/回),テレビ会議を行い,①研究計画と研究方法,②インタビュー調査対象者の選定,③研究内容に関する議論・情報交換を定期的に行っている。初年度の目標として,共同研究の実施と学術誌の共同執筆を設定し,ベルリン市での共同調査(2020年2月20日~3月4日,25件のインタビュー調査・録音),国際会議での発表(①2020年4月23-24日,Night Scenes Conference,UCL・ロンドン,②2020年7月2-4日, ICNX.LX, iSCTE・リスボン),国内学会での発表(2020年6月27-28日,文化経済学会<日本>),仙台)の参加を予定し,②③に関してはペーパーが受理された。しかし,コロナウィルスの世界的拡大により共同調査が不可となり,①もキャンセルとなったため,およそ3カ月間ほど予定が遅れている。しかし,②③はオンラインかつリモート開催が決定したため,この機会を活かし,リモート調査の実験的試みを測りつつ,②③のプロシーディング執筆に向けた議論をオンラインツール(Slack)を活用しながら実施している。また当初の予定では国際ワークショップを開催予定であったが,次年度以降に延期するかオンラインで開催する方法を現時点で模索している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も昨年度と同様,海外共同研究者と1週間~2週間に1回(1~2時間/回)のオンライン会議を行い,定期的にコミュニケーションをとりつつ国際研究を実施する。現時点でコロナウィルスの感染拡大防止に伴う渡航制限は緩和されていないが,国際・国内会議ともにオンラインやリモートでの開催例が増加しつつあるなか,オンラインツールを活かし,可能な限り当初の研究計画に沿って計画を実行していく。 具体的には2020年5月現在,プロシーディング2件の準備(②夜と文化政策,③ベルリンの都市文化政策)に取り組むが,これを基に国際ジャーナルに投稿する。また,既に予定されている国際発表では,ネットワーキングを重要視して参加する。 なお,2020年秋以降に海外移動の制約がなくなった場合,リスク管理を徹底しつつも再度,渡航調査を実施する。共同研究者は現在,本年度秋学期以降の変則的な大学の対応に追われているため不明確な部分もあるが,予備のオンラインインタビュー調査(対,ベルリンのナイトライフ街区経営者やアーティスト)を6月に予定する。オランダの調査は現地調査やネットワークの観点から同様の方法では困難かもしれないが,その場合にはベルリンの調査を文化政策的・文化経済的・社会アクターの視点からそれぞれ進めるなど,視点の切り替えと学術的目的の深化に切り替え対応する。リモート環境と物理的接触を上手く判断しながら,柔軟に調査に対応していきたい。 なお,ベルリンの音楽(エレクトロ音楽)は3月に24時間オンライン世界配信のライブプラットフォームを立ち上げ,「世界のオンライン化」に早期に対応をしていた。「エレクトロ音楽」の特徴や強みを活かした取り組みでもあり,現在の状況は文化的補償のみに依存しない文化経済の有り方を考える好機である可能性もある。本年度に関しては,インタビューの際にこの点を追加で聞いていこうと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの世界的拡大により,2020年2月20日~3月4日に計画していた渡航がキャンセルとなったことにより,残額が発生した。これにより,残予算が2020年度へと繰り越しとなった。繰り越し分は,謝金(共同研究者取得データのトランスクリプション)として2020年5月~6月頃に使用予定である。
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