2021 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・アラブの春時代における中東ムスリムのグローバル移動と社会関係の複合的再編
Project/Area Number |
19KK0023
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
齋藤 剛 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (90508912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥山 純子 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (10773864)
大坪 玲子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20509286)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 中東 / ポスト・アラブの春 / 移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、新型コロナウイルスの感染が世界的に収束していない状況のため、現地調査などを実施することはできなかったが、海外研究者との連携をとりつつ、研究を進めてきた。 実績としては、研究分担者の鳥山が編者となり、本研究課題の海外研究者であるレオン・ブスケンス(ライデン大学)、エイモン・クレイユ(ヘント大学)などの研究成果を収めた論集『フィールド経験からの語り』(春風社)が刊行されている。また、鳥山は、単著『「私らしさ」の民族誌ーー現代エジプトの女性、格差、欲望』を立命館大学の出版助成金を獲得して公刊した。この単著出版の準備段階において、本科研班においても研究会を開催し、その内容について意見交換・助言を行なっているほか、海外研究者のブスケンスなどからも助言を得て改稿が進められている。 これらの実績に加えて、研究分担者の大坪は、本科研班が共催として昨年度開催したシンポジウムの成果などを踏まえた論文集『嗜好品から見える社会』を本年度公刊している。本科研班に参加している大坪、鳥山が本論集の作成、準備を担ってきているほか、論文を寄稿している。さらに大坪は、2021年6月に人工知能学会において、小田淳一との共同研究発表「カート・オントロジー構築の試み」(2020年度発表)によって、研究会優秀賞を受賞している。 齋藤は、本年度は共同研究の今後の展開を支える理論面に関わる研究を重点的に進めた。以上の他に、研究代表者の齋藤、分担者の大坪、鳥山が関わっている中東における家族の変容を対象とした論集企画の出版準備が進んでいる(令和4年度刊行予定)。また、科研班では国際シンポジウムの開催の向けた準備の一環として読書会を継続して実施しているほか、令和4年度の国際シンポジウム開催に向けた準備をブスケンス氏と連絡をとりながら継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大という状況の中でも、研究実績の項目で記したように、研究班のメンバーが中核となった論集『フィールドワークの経験』、『嗜好品から見える社会』、単著『「私らしさ」の民族誌』などの成果発表を相次いで実現できているほか、これまでの成果発表が学会賞(研究会優秀賞)を受賞するなど高い評価を得ている。これらの点から、共同研究の推進と成果発表は、おおむね順調に進んでいると評価できる。 また、令和3年度には、新型コロナウイルスの世界的感染拡大が継続する中にあって研究を推進するための対応策の一つとして、研究分担者の鳥山は、令和4年度に、海外研究者のレオン・ブスケンスが所長を務めるオランダ・モロッコ研究所(The Netherland Institute in Morocco)での研究滞在を計画し、上記の研究実績の蓄積と並行してその準備を進めてきた。他方で、研究分担者の大坪は、令和3年度に、沖縄などでの現地調査を実施しているほか、新たに研究協力者を得て、多角的にe-コマース、さらには沖縄などにおけるコーヒー栽培とイエメン系移民の関連についての調査を進めている。齋藤は、本年度はブスケンスなどと連携しながら、文献資料の収集を精力的に行い、共同研究の今後の展開を支える理論面に関わる研究を重点的に進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、新型コロナウイルスの感染拡大状況に留意しつつ、現地調査を各自年度内に実施する予定である。大坪は沖縄での、研究協力者を加えたコーヒー栽培とe-コマースについての調査を継続するのと同時に、アラブ首長国連邦とマレーシアでの海外調査を実施する予定である。 鳥山はモロッコにおける教育制度の展開についての研究、エジプトにおける「1月25日革命」以降のインターナショナルスクールの新たな展開に関わる調査、レバノンにおける海外調査を実施する。 齋藤は、フランスとモロッコにおいてアマズィグ運動の展開について現地調査を実施する予定である。 以上の現地調査のほか、6月にムスタファー・アブドッラー(ナント大学)やブスケンスとの研究会合、夏季にはブスケンス、鳥山、齋藤が参加する国際シンポジウムのモロッコでの開催を予定している。同時に、ブスケンス、クレイユ、アブドッラーと連携をとりつつ、年度末を視野に国際ワークショップの開催について検討を進めていく。これらの国際会議の開催と並行して、齋藤、大坪、鳥山の間で本科研と関連する読書会及び研究会の開催を継続してゆく。なお、研究を総括する立場にある齋藤は、本年度も文献資料の収集と分析を重点的に進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額の差額が生じた理由としては、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が継続し、終息をしていないという状況の中で、当初の計画通りに海外調査などが実施できなかったことが挙げられる。 令和4年度には、モロッコで国際シンポジウムの開催を夏季に予定しているほか、ベルギーにおいて国際ワークショップを年度末に実施する予定である。また、齋藤はフランス、モロッコにおいて、鳥山はモロッコ、フランス、エジプト、レバノンなどにおいて、大坪は、アラブ首長国連邦、マレーシアなどにおいて現地調査を実施する予定で準備を進めている。
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