2019 Fiscal Year Research-status Report
International Child Protection and the UN Convention on the Rights of the Child - From an Interdisciplinary Perspective
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19KK0030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西谷 祐子 京都大学, 法学研究科, 教授 (30301047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田切 紀子 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (10316672)
小川 玲子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (30432884)
木村 敦子 京都大学, 法学研究科, 准教授 (50437183)
原 めぐみ 和歌山工業高等専門学校, 総合教育科, 助教 (90782574)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 国際的な子どもの保護 / 児童の権利条約 / ハーグ条約 / 国際的な子の連れ去り / 移民 / 難民 / 学際研究 / 国際共同研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,グローバル化が進み人の移動が活発化する中で,子どもを保護し,適正な社会環境及び家庭環境を提供する方策を探るために,法学,心理学,社会学の専門家が協力して,1989年児童の権利条約を踏まえてドイツ等の欧米諸国と比較をしながら,日本における国際的な子どもの保護の現状を把握し,さらなる発展の方向性を探ることを目的としている。 2019年度には,まず日本における問題状況を確認するために,研究代表者及び研究分担者は,打ち合わせを行い,共同研究を進めるための具体的な計画を立てた。国内で行われた子の奪取に関するハーグ条約5周年記念シンポジウムにおいては,研究代表者が司会者として,研究分担者である小田切紀子が報告者として登壇したほか,研究分担者である小川玲子が出席し,ハーグ条約の基本構造及び日本における運用の現状について検討を進め,国際的な子どもの保護という視点から,法学,心理学及び社会学の観点を踏まえて考察を深めたほか,英国及び米国の研究者及び実務家とも交流して今後の共同研究の基盤を構築することができた。また,早稲田大学にて英国の専門家を招聘して子の面会交流に関するシンポジウムが開催された際には,小田切が綿密に準備して関与したほか,西谷が出席して意見交換を行い,今後の共同研究のための有益な基盤を構築することができた。 西谷が2019年秋にドイツのハンブルク及びミュンヘンに渡航した際には,国際学会にて報告をしたほか,ミヒェルス教授らをはじめドイツ,フランス,英国,米国,豪州,中国等の研究者と綿密な意見交換を行い,国際共同研究のための準備を進め,今後の活動計画を立てることができた。研究分担者も各々共同研究の準備を進めたほか,海外の研究者とも意見交換を行った。このように,初年度には,今後の学際的な国際共同研究のための準備を着実に進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度には,国内で研究代表者及び研究分担者が意見交換を行いながら,今後の学際的な国際共同研究のための準備を十分に行うことができた。特に国際的な子の連れ去りに関するハーグ条約についても,移民の子どもの保護をめぐる課題についても,法学,心理学,社会学の観点から多面的かつ学際的に研究を行うのが有益であり,各々の視点から問題状況を分析する必要があるところ,各々研究を進め,折に触れて意見交換を行う中で,日本における国際的な子どもの保護をめぐる問題状況,諸外国との比較,今後のあるべき法政策及び社会政策のあり方について課題を明らかにし,研究対象を明確にすることができたのは収穫であった。また,幸い日本政府や弁護士会,学会等が英国・米国等から専門家を招聘してシンポジウムを開催し,そこに研究代表者及び研究分担者が参加する機会を複数得ることができたため,そこでの報告及び意見交換を通じて最新の情報に接しながら,各国の情勢について実務の観点も踏まえつつ考察を深めることができ,大変有益であった。また,西谷がドイツのハンブルク及びミュンヘンに渡航した際には,ミヒェルス教授を始めとする多数の国際私法学者と交流し,具体的な問題についてもきわめて多くの有益な情報を得ることができた。それによって,たとえばEUにおけるハーグ条約の運用をめぐる問題点とその改善策,各国及びEUの努力と裁判官ネットワークの重要性,2019年6月に改正されたEU規則の内容とその限界,シリア難民やムスリム移民の子どもの保護など,重要な課題について正確な情報を得たうえで考察を深めることができ,本研究課題を遂行するための基盤を構築することができた。さらに,2019年秋には,西谷が日本政府からハーグ国際私法会議による代理懐胎プロジェクト専門家会合に派遣され,諸外国の専門家と子どもの保護をめぐって貴重な意見交換を行う機会にも恵まれた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には,2019年度の実績を踏まえて,さらに本研究課題による学際的な国際共同研究を進める予定である。すでに諸外国の重要な文献を渉猟しながら研究を進めているほか,ミヒェルス教授とも連携しながら,フランス及び英国等の研究者及び実務家とも意見交換を行い,共同研究を進めるための準備を行っている。西谷は,子の奪取に関するハーグ条約の運用について,日本の中央当局とも連携し,実務家とも交流があるほか,5年ほど前から日本政府の依頼で,ハーグ国際私法会議による代理懐胎プロジェクトの専門家会合メンバーとして活動しており,作業部会での検討を進める中で,諸外国の専門家とも対面会議及びウェブ会議を通じて子どもの保護について幅広く意見交換を行い,EU,スイス,米国,カナダ等の諸外国の現状と課題について深く考察する機会を得ている。これらの内容は,本研究課題において国際的な子の保護のための方策について考察するための重要な基盤となるもので,今後はそこで得られた情報を他の研究分担者にも提供し,法学のみならず,心理学及び社会学の知見を踏まえて,諸外国の専門家と連携しながら国際共同研究を進めていく所存である。 今般のコロナ禍のために,当初予定していたほどには海外に渡航できなくなる可能性も高いが,上記のような事情から,すでに諸外国の専門家と学際的な共同研究を行うための基盤を構築できており,ウェブ会議やメールでの意見交換なども活用することで,国際共同研究を進めることができるものと解される。もちろん,海外への渡航が可能となった段階で,当初の予定どおり,ドイツ,フランス,英国等に渡航してセミナーやシンポジウムに参加して意見交換を行ったり,裁判所や調停機関を訪問したりすることで,現地調査も踏まえながら,学際的な国際共同研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度の実績において示したように,本年度は幸い国内で様々な国際シンポジウムやセミナーが開催され,諸外国の研究者及び実務家と直接意見交換を行い,交流を深める機会を得ることができた。そのため,研究代表者及び研究分担者は,当初予定していたほどの海外への渡航旅費をかけることなく,国内で十分な情報を収集して本研究課題を遂行する準備を進め,意見交換を行い,基本的な文献の渉猟及び検討を開始し,今後学際的な国際共同研究を進めるために必要となる基盤を構築することができた。また,本研究課題のスタートが2019年度中盤であったことから,研究代表者及び他の研究分担者は,すでに遂行していた他の研究課題とうまく調整することができ,本研究課題による経費をそれほど支出することなく,十分な設備を用いて研究を遂行することができた。以上の理由によって,本年度の経費を節約することができたため,次年度に予算の一部を回すこととした。2020年度には,コロナ禍が早めに収まれば海外への渡航を積極的に行うことで,渡航が難しい場合には,ウェブ会議システムを整備するなどして,研究代表者及び研究分担者の連携を図りながら,諸外国の専門家との意見交換を行い,文献研究を通じて考察を深め,相互に研究発表を行うことを通じて,国際共同研究を進める所存である。
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Research Products
(13 results)