2019 Fiscal Year Research-status Report
Public Inspection and Public Audit in the UK Audit Commission - Implication for Japanese Local Government Reform in the age of Financial Dificulties
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19KK0034
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
石原 俊彦 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (20223018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 尚秀 大阪市立大学, 大学院都市経営研究科, 教授 (40411805)
井上 直樹 福知山公立大学, 地域経営学部, 准教授 (90792359)
酒井 大策 常葉大学, 経営学部, 講師 (80783761)
関下 弘樹 福山大学, 経済学部, 講師 (30824601)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 公検査 / 公監査 / 英国監査委員会 / 包括的業績評価システム / 包括的地域評価システム / VFM監査 / Accountability / Nw Public Governance |
Outline of Annual Research Achievements |
英国では地方自治体を対象にした公監査政策の一環として、1983年に監査委員会(Audit Commission)が設立された。また、イングランドとウェールズの自治体を対象に業績監査(Value for Money Audit: VFM監査)が導入された。 2002年には公検査政策の新展開として包括的業績評価(Comprehensive Performance Assessment: CPA)制度が導入されている。本研究では英国の大学等研究機関や政府・自治体等の実務機関に所属する共同研究者と連携して、監査委員会によるVFM監査の実態を詳細に分析するとともに、CPA制度の枠組み・成果・課題等を綿密に考察している。そして、VFM監査とCPA制度が自治体財政に関する住民の関心を喚起し(財政民主主義の促進)、財政健全化にどう貢献したのかの検証に着手した。 本研究では、CPA制度は政府による自治体統制の手段ではなく、地方分権推進のためのプラットフォームの提示であったことを論証しようと試みている。これまで、CPA制度に対しては、中央政府から地方政府への統制手段として位置づける研究が定説となっている。確かにこの定説としての側面は否定できないが、それらはあくまでも副次的な効果であって、CPA制度の最も本質的な核心は、地方分権と地方政府におけるAccountabilityを促進し、財政民主主義を展開するための有用な手法であったという点(=仮説)である。 本研究では、この仮説の論証に取り組み、その上で、VFM監査とCPA制度が、わが国自治体の財政健全化と財政民主主義の実現に有益な手がかりとなることを解明する。昨今のわが国における地方公会計改革や財政ディスクロージャーの議論は、非常に会計テクニカルなものが多く、一般の住民には到底理解できるものではない。その改善のヒントがCPA制度にはある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度には研究分担者の4名と合同で、英国における研究調査を実施した。この調査研究でインタビューやヒアリング、研究のための討議を行った主な研究者・実務家とその所属は以下のとおりである。1) Prof. John Raine (Birmingham University),2) Mr Chris Game (Birmingham University), 3) Dr. Epameinondas Katsikas (Kent Business School), 4) Mr. Stuart Russell (Sussex County Council),5) Dr. Howard Davis (Warwick University),6) Dr. Michael Hughes (Audit Commission),7) Prof. Peter Murphy (Nottingham Business School),8) Prof. Martin Jones (Notthingham Business School), 9) Dr. Russ Glennon (Manchester Metropolitan University),10) Mr. Steve Freer (PSAA)。 これらのインタビュー調査では、英国における公検査と公監査の制度が生み出された背景と、制度実施の際に直面された実務的課題を中心に、聞き取り調査を行い、今後考察が必要とされる研究資料の確認を行い、追加的な示唆をいただいた。訪英では、予定を上回るヒアリングが可能となり、本研究題目における課題設定の妥当性を再確認できた。また、公検査とCPA(包括的業績評価)におけるVFM監査との関係を明確にすることなどが、新たな研究課題として認識されるなど、想定以上の研究成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実施した英国における共同研究では、英国の公検査研究の第一人者とされる Howard Davis 氏から、Inspection 制度導入の背景や研究の動向について、有益な示唆を得ることができた。Davis 氏から本研究の基礎的文献として、その詳細な分析を進められたのが、次の二冊の書物である。① Howard Davis, James Downe and Steve Martin, External Inspection of Local Government: Driving Improvement or Drowning in Detail ?, Joseph Rowntree Foundation, 2001. ② Howard Davis, James Downe and Steve Martin, The Changing Role of Audit Commission Inspection of Local Government, Joseph Rowntree Foundation, 2004. 2020年度における研究活動は、COVID-19 の影響を受けて、英国における現地調査を実施できない可能性もある。そこで本研究では、上記の①②の書物の内容をベースにして、その背景にある事象や政治的背景を考察の主たる対象とする。この考察においては、英国における最も重要な研究協力者である Notthingham Business School の Dr. Peter Murphy 氏らとのオンライ会議などを積極的に進め、英国現地における在外研究に相当する研究成果を実現できるように配慮する。 なお、これらと並行して、英国監査委員会におけるアーカイブ資料の分析を継続して進め、英国における調査研究の対象を絞り込む予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19 の影響で年度末の英国出張では予定の60%程度のヒアリングしか実施できなかった。また、日本国内におけるインタビュー調査も予定通りに実施できなかったために、執行残高が生じている。この残高については、COVID-19の問題が解決されれば順次執行される予定である。なお、本研究の研究期間は6年度間に及び、研究費繰り延べも可能なことから、研究計画全体への影響はまったく生じていない。
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