2020 Fiscal Year Research-status Report
量子ビーム相関解析法による生体高分子構造・ダイナミクスの探求
Project/Area Number |
19KK0071
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 倫太郎 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (80563840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 正明 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (10253395)
守島 健 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (40812087)
奥田 綾 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (80825646)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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Keywords | 小角中性子散乱 / 部分重水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては、本プロジェクトの中心的な測定手法であるSAXS/SANS同時測定システムの立ち上げがCOVID-19の世界的拡大により十分に進展しなかった。そのため、本システムの最適条件検討に向けて以下に示す二つの試料に対して予備的測定を現地スタッフの全面的な協力(こちらが参加できるリモート測定では無かった)により行った。一つ目の試料として、時計タンパク質 (KaiA, KaiB, KaiC)を用いた。生体内において24時間周期を制御に対して中心的な役割を果たすKaiA, KaiB, KaiCの三者複合体の溶液中の構造を、SEC-SAXS, SEC-SANS,構造モデリング及び全原子動力学計算を統合的に組み合わせることで世界で初めて解明することに成功した。また、二つの試料として抗体に注目した。具体的には、溶液中における抗体の精密構造解析をSEC-SAXS, SEC-SANS,分析超遠心法を組み合わせるこにより行った。 更に、今後より高濃度の重水素化タンパク質を作成するにあたり不可避である重水素化技術の高度化を確立した。具体的には、重水素化率の高度制御、調整された重水素化タンパク質をハイスループットで評価できる重水水素化率検定法及びそれに付随したソフトウェアの開発、そして、重水素化試料を作成する際の大きな足枷となるコストの低減となる重水再利用に関するプロトコールを確立した。また、それらの技術を所属研究室でのweb上で公開し、広く他の関連分野の研究者に利用できるようにした。今後、特に中性子を用いたタンパク質の溶液散乱研究を行う際の指針となると強く期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度においては、特に共同研究先での小角中性子散乱実験の大半がCOVID-19の影響により延期或いはキャンセルとなった。その一方で、研究実績の概要で記載したが関連する重水素化技術の高度化、更にはその技術の一般公開を行った。その結果、現地で測定するサンプル調整技術は格段に向上したと言える。今年度も国外の中性子散乱施設での現地での小角中性子散乱実験はCOVID-19の感染状況により不透明な部分があるが、現地スタッフと十分に相談の上できる限り未実施研究課題のリモート測定の可能性も検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては時計タンパク質の24時間周期における構造変化をSAXS/SANS同時測定をILLにて行う予定である。実施時期に関しては現状では、今年度の後半を現状では予定しているがCOVID-19の感染状況によりリモート測定へと切り替える。また、ドメイン選択的な"散乱的に可視化”或いは"散乱的に不可視化"を実現するためのドメインライゲーション技術の実用化・高度化も2020年度から継続して実施する。その技術を最大限に活用することで、時計タンパク質やクリスタリンなどのマルチドメインタンパク質に適用しSAXS/SANS測定を試みる。 また、近年では得られた散乱プロファイルの解析に計算機解析の適用が強く求められている。そこで、全原子動力学計算、粗視化動力学計算から得られる計算結果を用いて、散乱プロファイルを効率的に解析可能なシステムの構築にも努める。
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Causes of Carryover |
2020年度においてはCOVID-19の感染拡大に伴い想定していた国外施設への出張実験の大半が延期或いはキャンセルがあった。そのため、旅費及び物品費を使い切ることが出来なかった。今年度も海外での出張実験は制限される可能性があるので、リモート実験に代替する予定である。
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Research Products
(13 results)