2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of International Research Center for Liquid Hydrogen Marine Transportation
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19KK0117
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
武田 実 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (50206992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 一真 神戸大学, 海事科学研究科, 助教 (20760664)
松本 明善 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (50354303)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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Keywords | 液体水素 / 国際水素サプライチェーン / 液体水素運搬船 / 神戸大学・ドレスデン工科大学国際共同研究 / 若手研究者育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、将来の大量水素消費社会を想定して、高密度・高純度・極低温の液体水素(沸点20 K)を重要なエネルギーキャリアーと捉えて、ドレスデン工科大学との国際共同研究を推進し、液体水素運搬船を基軸とした国際水素サプライチェーンを構築するための基盤技術開発を目指す。この研究は、水素低温工学とマリンエンジニアリングを融合して、全く新しい「水素マリンエンジニアリング」を創出するとともに、「液体水素国際海上輸送研究拠点」の構築に大きく貢献するものである。 本研究では、これまでに培われた液体水素を対象とした、水素輸送貯蔵技術に関する研究成果および国際共同研究のネットワークを基にして、国際共同研究強化を目指すとともに、若手研究者の育成を実施している。本研究の目的は、【A】液体水素の海上製造技術に関する研究において、オルト・パラ水素変換に伴う発熱を低減して水素液化効率を高めるために、新しいオルト・パラ水素変換触媒を開発することである。また、【B】液体水素の海上輸送貯蔵技術に関する研究において、実船等を利用して舶用大型タンク内部の液体水素のスロッシング/ボイルオフ現象を解明し、これを制御する手法を開発することである。 2019年度は、武田・前川が春季休業中にドレスデン工科大学に5日間滞在して、新型オルト・パラ水素変換触媒、水素ガスの異常に長いパラ・オルト変換現象、減圧時における液体水素の熱流動特性等についてHABERSTROHらと議論するとともに、今後の研究の推進方策について相談した。また、武田・前川・松本は、液体水素運搬船用MgB2液面計の研究開発について議論するとともに、作製したMgB2線材の分析評価を実施した。 10th ACASC/2nd Asian-ICMC/CSSJ Joint Conferenceにて、武田は液体水素の急減圧時における観測について招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、【A】液体水素の海上製造技術に関する研究、【B】液体水素の海上輸送貯蔵技術に関する研究の2つに分けて、液体水素運搬船を基軸とした国際水素サプライチェーン構築のための基盤技術開発を目指している。本研究を遂行するための研究組織は4名(武田、前川、松本、HABERSTROH)で構成されており、これまでの研究内容は以下のとおりである。 【A】液体水素の海上製造技術に関する研究として、(A-1)新型オルト・パラ水素変換触媒の研究開発、(A-2)新型水素用冷凍機/液化機の研究開発、(A-3)蒸発ガスにおけるオルト・パラ組成比の経時変化に関する研究を実施している。また、【B】液体水素の海上輸送貯蔵技術に関する研究として、(B-1)加圧・減圧時における液体水素の熱流動特性、(B-2)輸送・振動時における液体水素の熱流動特性、(B-3)液体水素運搬船用MgB2液面計の研究開発に関する研究を実施している。 2019年度は、主にサブテーマ(A-1)(A-3)(B-1)(B-3)の研究を実施して、以下の進展が得られた。(A-1):武田・前川はHABERSTROHらと新型触媒について議論した。従来のFe2O3とは異なる磁性材料(Ni系など)に注目し、微粒子状態の材料を金属管内にパッキングする際の空隙平均穴径を調べることとした。(A-3):オルト・パラ組成比の経時変化を調べるために、5本のタンクを用いて蒸発ガスを採集し、長期間保存した。(B-1):液体窒素および液体水素を対象とし、液体状態・設定圧力・減圧速度をパラメータとして急減圧試験を行った。その結果、窒素・水素ともに、減圧速度が速いほど蒸発量が少ない傾向が見られた。また、水素においてミストの発生が明瞭に観測された。(B-3):松本は、CuNiシースMgB2線材に対してSEM観察(EDX分析)を行い、Mgとシース材との高い反応性を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、以下の研究組織(4名、内1名は海外共同研究者)・役割分担・渡航計画に従って推進する。 【研究代表者】武田 実・神戸大学:液体水素に関する実験、計算および研究総括を担当する(テーマA、B)。毎年夏季/冬季/春季休業中にドレスデン工科大学へ1~2週間滞在し、国際共同研究を取りまとめる。【研究分担者】松本明善・NIMS:液面センサーとなる超伝導線材を作製する(テーマB)。前川一真・神戸大学:液体水素に関する実験と計算、液面計の設計と実験を担当する(テーマA、B)。毎年夏季/冬季/春季休業中にドレスデン工科大学へ1~2週間滞在し、国際共同研究を行う。【海外共同研究者】Christoph HABERSTROH・ドレスデン工科大学:液体水素に関する計算、液面計の設計を担当する(テーマA、B)。 【A】液体水素の海上製造技術に関する研究(A-1)新型オルト・パラ水素変換触媒の研究開発:新型触媒として、微粒子状態の磁性材料(Ni系など)を作製し、空隙平均穴径と変換効率の関係を調べる。(A-2)新型水素用冷凍機/液化機の研究開発:GM冷凍機ベースの新型液化機を設計するとともに熱交換器を作製し、性能を評価する。(A-3)蒸発ガスにおけるオルト・パラ組成比の経時変化:オルト・パラ水素分析計を用いて、採集ガスのパラ水素濃度を調べる。 【B】液体水素の海上輸送貯蔵技術に関する研究(B-1)加圧・減圧時における液体水素の熱流動特性および(B-2)輸送・振動時における液体水素の熱流動特性:小型液体水素容器を用いて、減圧・振動時における容器内部の温度・圧力/蒸発量・沸騰画像を取得し、ミストの発生・スロッシング/ボイルオフに関する知見を得る。(B-3)液体水素運搬船用MgB2液面計の研究開発:10 mオーダーの長尺液面計を設計するとともに、超伝導MgB2線材の長尺化に関する製造条件・手法を検討する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、武田・前川が冬季休業中にドレスデン工科大学へ1~2週間滞在し、国際共同研究を推進することとしていたが、同大学との日程調整の結果、滞在日数を減らして、春季休業中に5日間滞在することになったため。また、世界的なヘリウムガス不足問題に直面し、予定どおりヘリウムガスを購入できなかったため。 次年度使用計画として、新型オルト・パラ水素変換触媒の作製を民間業者へ依頼し、その経費を計上する予定である。
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Remarks |
新型オルト・パラ水素変換触媒を開発するために、従来のFe2O3とは異なる磁性材料を試作する。その際、微粒子状態の材料を金属管内にパッキングするが、変換効率に対する空隙平均穴径の最適値があるかどうか調べる。 MgH2と海水を用いて水素製造する技術に関する研究を推進するために、発生水素量およびオルト・パラ組成比を調べる。この組成比を調べる際は、オルト・パラ水素分析計を用いる。
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Research Products
(9 results)