2019 Fiscal Year Research-status Report
磁気トンネル接合への色中心の導入と量子状態の電気的制御
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19KK0130
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金井 駿 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (40734546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 淳 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 助教 (50801156)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 量子エレクトロニクス / 磁気トンネル接合 / 色中心 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では欠陥中心の電気的制御を念頭に、母体材料として主にトンネル接合に用いられる絶縁体への欠陥の導入とその光学検出磁気共鳴を調べる。本年度はMgO中にNi欠陥を導入する方法を明らかにし、フォトルミネッセンス及び光学検出磁気共鳴を測定する測定系を構築した。NiはMgO中へ全率固溶するため、原子層レベルの膜厚で成膜した後、熱拡散により容易に点欠陥が得られることが分かった:MgOの熱処理温度を1100度とした際に、1300nm付近にピークを持つフォトルミネッセンス信号が観測された。加えて、励起エネルギ依存フォトルミネッセンス測定から、入射波長675 nmの際に最も大きなフォトルミネッセンス信号を持つことが分かった。これらの特徴はNi孤立色中心に対応する。MgO基板Niを導入後、RF磁場を印加可能なコプレーナ導波路を作製し、RF磁場及びDC磁場印加中のフォトルミネッセンスから光学検出磁気共鳴を測定した。最適波長675 nmの入射レーザ下で円偏光を入射し、円偏光フォトルミネッセンスを検出したところ、RF磁場印加による磁場掃引スペクトルには殆ど信号変化が得られなかった。MgO中のNiはd-d遷移であり、スピンのエネルギ緩和時間と比較して発光寿命が長いことが原因であると考えられる。ここから、MgO:Niのスピン緩和時間は1 ms以下であることがわかった。許容遷移となる色中心を用いて全く同様の手法により色中心の光学検出磁気共鳴測定を行い、そのスピン緩和ダイナミクスについて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時、2019年度~2020年度に(1)光学検出磁気共鳴測定用素子作製、(2)光学検出磁気共鳴測定、(3)トンネル接合の作製を目標としていた。この内(1)について2019年度日本で終了した。(2)について渡航先で低温測定を行う予定であったが、渡航制限により不可能であった。海外共同研究先と日常的なディスカッションやテレビ会議を行い、上記実績により得られた内容から実際に実験に用いる材料、構造について絞り込んでおり、渡航制限解除後に効率良く研究を推進するための知見が得られつつある。加えて、発光時間の短い酸化物を母体とする色中心では、室温でも偏光を用いることで光学検出磁気共鳴測定が可能であることがわかり、実際に室温で実験的に光学検出磁気共鳴を観測し、(2)についても2019年度で既に達成しており、当初の予定以上に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における最終的な目標を達成するための測定系の構築が完了し、材料系についても目星が付いた。今後はトンネル接合の作製のため、薄膜中へ色中心を導入し、その光学検出磁気共鳴を観測する。国内で対応可能なイオン注入条件、熱処理温度条件、雰囲気条件を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスによる渡航規制・及び外出規制が世界各国で発令されたことにより、国内外での渡航による共同研究が困難になった為。
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Research Products
(2 results)