2020 Fiscal Year Research-status Report
磁気トンネル接合への色中心の導入と量子状態の電気的制御
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19KK0130
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金井 駿 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (40734546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 淳 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 助教 (50801156)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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Keywords | 量子ビット / 色中心 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
量子応用向け色中心の重要な物性の一つに位相緩和時間がある。近年、位相緩和時間を計算する大規模行列計算を、現実的な時間で実行するための近似手法が開発され、これによりダイヤモンドやSiCといった、実験的に精力的に位相緩和時間が測定されてきた材料中の色中心の緩和時間が計算され、実験を良く再現することが分かってきた。これまで本手法はスピン1/2の核種の核スピンを持つ材料に限られてきたが、本研究ではこれを任意の核種へ拡張することに成功した。これにより、ダイポール相互作用が支配的な核スピンの相互作用、あらゆる母体材料での量子位相緩和時間を計算することが可能となった。その結果、これまで用いられてきたダイヤモンドやSiCと比較して、数十倍長い位相緩和時間を持つ母体材料を数種予言することに成功した。 位相緩和時間は、核スピンのg因子、スピン量子数に対するスケーリング則を持つことが明らかになった。これを用いることにより、位相緩和時間を代数的に記述する手法を編み出した。これは、上記近似手法で必要とされる、高性能計算機で数時間~数日という計算時間を、例えば関数電卓で実行可能な程度に簡略化するものである。この発見に基づき、12,000の新たな材料について、世界で定量的に位相緩和時間を見積もった。その結果、これまで実験的に最長の緩和時間が報告されていたSiCは非カルゴゲナイド系で最大の位相緩和時間を持つこと、約700種類のカルコゲナイド材料がそれ以上の位相緩和時間を持つことなどが予測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで主に用いられてきたダイヤモンドやSiC中の色中心に比較して位相緩和時間の長い母体材料を数種類予言した。これにより、磁性体・微細化と相性の良い母体材料、例えばSiO2などと言った、大型基板が容易に入手可能でダイヤモンドやSiCが持たない機能性を有する材料についても位相緩和時間が長く、量子研究プラットフォームとして有望であることなどが新たにわかった。磁性、ピエゾ特性など、量子研究における新たな機能性をもたらす研究へ展開されることが期待される。 更に、量子位相緩和時間計算について、当初の研究予定では、上記のように、ターゲットとなるホスト材料を定め、計算機実験によりその材料の量子位相緩和時間を新たなホスト材料を見つけることを想定していた。一方で、量子位相緩和時間を決定する因子を一つずつ分解することで、その単純な位相緩和時間計算手法が明らかになった。これは、数万、数十万というオーダーのホスト材料の量子位相緩和時間の量子ビットへの応用の可能性を判定することを可能にし、新たな機能性材料を用いた量子材料研究に取り組む際の指針となるマイルストーンとなることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はCOVID-19により、相手方へ渡航しての実験が不可能であったため、リモートでの共同研究(計算、実験)環境を整備した。2021年度はこれを強化し、下記共同実験を推進する。 理論的に長い量子位相緩和時間を持つことが予測されたホスト材料について、イオン注入した材料の光学測定、バンチング・アンチバンチング測定などを行い、単一欠陥中心を作製する。特に熱処理雰囲気、温度について系統的な実験を行う。 単一欠陥中心が得られる材料について、コプレーナ導波路を作製し、RF磁場を導入することで、光学検出磁気共鳴測定を行い、量子位相緩和時間測定を行う。単一欠陥中心及び相互作用下にある欠陥中心の光学検出スピンダイナミクスを、共同実験研究を通し明らかにする。 上記計算により得られたスケーリング則は、三次元母体材料に対するものである。このスケーリング則が成立する条件について詳細に調べる。例えば、次元性が変わった場合(二次元系)に対するスケーリング則、dynamical decoupling, 四重極相互作用による効果、接触項による効果を共同研究により明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度はCOVID-19の影響で旅費に大幅な減少が生じたほか、大学での実験実施にも大幅な制約が生じた。前述の通り、リモート計算、リモート実験の環境を構築しているが、2021年度に状況が改善し、実際に現地で実験の実施が可能となった場合に備え、次年度使用とした。
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Research Products
(21 results)