2021 Fiscal Year Research-status Report
グラファイト質金鉱石のバイオハイドロメタラジーの学理
Project/Area Number |
19KK0135
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笹木 圭子 九州大学, 工学研究院, 教授 (30311525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10706386)
金田 隆 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (20243909)
GUO BINGLIN 九州大学, 工学研究院, 学術研究員 (60839588) [Withdrawn]
KONADU KOJO・TWUM 九州大学, 工学研究院, 学術研究員 (40873394)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | 超難処理炭素質金鉱石 / 酵素反応 / リグニン分解酵素 / 金 / 炭素質物質 / ラマン分光 / グラファイト化度 / QEMSCAN |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスまん延防止の観点から豪州への渡航は全く実現しなかったが、炭化度の異なる炭素質金鉱石の入手し、ラマン分光、熱分析をはじめとした炭素質の分解性に関する特性化をおこない、逐次処理を実施した。豪州にて観察する予定であったcarubamate 樹脂を使用したQEMSCAN分析も実現しなかったが、その代わり、アルカリ浸出後の浸出液の3次元蛍光分光分析から、酵素処理によってどの程度のサイズの分子までに分解されたかを比較し評価することができた。その結果、ラッカーゼはリグニンペルオキシダーゼやマンガンペルオキシダーゼよりも、広範囲の白色腐朽菌から生産でき、酵素の安定性も高く、供給性およびハンドリング性の点で優れているのみならず、3次元蛍光分光スペクトルから、より低分子の腐植物質に分解できていることがわかり、これによって炭素質分解後の金の抽出効率を向上させることにつながることも明らかとなった。また、示唆熱重量分析により、ラッカーゼ分解反応は、炭素質だけに作用するのではなく、金鉱石中の硫化物の酸化変質にも、リグニンペルオキシダーゼやマンガンペルオキシダーゼとは異なる影響を与えていることも新たに分かった。炭素質金鉱石の逐次処理について、1段階目と2段階目の処理工程で酸洗浄を挟む重要性を明らかにしたこと、炭素質金鉱石のうち銀も同時に含むものに対して逐次処理を行う場合の利点、ラッカーゼによる炭素質物質の分解産物のGCMSによるキャラクタリゼーションとシアン金錯イオンの吸着特性について論文を公表した。このほか、ラッカーゼを用いた炭素質金鉱石の逐次処理に関する初めての論文を投稿中である。また、リグニン分解酵素のモデル物質として西洋わさび由来ペルオキシダーゼを用い、新しい基質としてN-ベンゾイルロイコメチレンブルーが優れた基質であることを見出し、ラッカーゼの蛍光測定法に適用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
豪州へ渡航し、炭素質金鉱石のQEMSCAN分析はできていないが、別アプローチで逐次的バイオ処理の評価を進めることができている。評価の手段にこだわらず、当初の目的にアプローチして一定の結果が得られている。ただ、反応前後での金粒子の直接観察データがQEMSCANやTIMAで得られれば、それに対する対策も明らかになるはずなので残念である。 新しいラッカーゼの活性測定法である、N-ベンゾイルロイコメチレンブルーを基質とするラッカーゼの蛍光光度法は、従来法である2,2′-アジノ-ジ-(3-エチルベンゾチアゾリンスルホン酸)を用いた吸光光度法よりも数倍高感度であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
炭素質金鉱石の逐次的バイオ処理のうち特徴的な酵素分解のステップを中心に検討を進めているが、金回収率を最大化するには硫化物分解工程も鉱石ごとに最適化しなければならないことを受けて、ほかの炭素質金鉱石を用い、他の硫化物分解微生物条件の検討をする。 2022年11月には豪州にて国際バイオハイドロメタラジーシンポジウムが開催予定であり、これに向けて国際共同で成果発表をする予定である。 キノコなどからラッカーゼを抽出し、開発した蛍光光度法によりその活性を測定することで、実試料中のラッカーゼ測定に適用できることを示す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスまん延防止措置として、海外共同研究先との往来ができないこと、国際学会に参加できないことから、旅費、その他(学会登録費)などが大幅に使用できず、次年度使用額として持ち越された。2022年度はこの分野の最大の国際シンポジウムIBS2022(当初は2021年開催が予定されていたが世界的なコロナパンデミックのために国際アドバイザリーボード、現地実行委員会の協議により延期が決定された)が豪州にて予定されており、対面で参加する状況が許せば、南オーストラリア大学またはCSIROでの試料観察、中国、カナダなどの競合研究チームとの意見交換、カーティン大学とのディスカッションなどいろいろな交流が計画できる。アフリカの炭素質分が特に多い金鉱石の入手も予定しているので日本側で実施する実験から新たな知見が得られる見込みもある。
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Research Products
(13 results)