2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of near-infrared organic semiconductors
Project/Area Number |
19KK0142
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀧宮 和男 東北大学, 理学研究科, 教授 (40263735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川畑 公輔 東北大学, 理学研究科, 助教 (10710212)
大垣 拓也 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (80804228)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 近赤外吸収 / 太陽電池 / フォトディテクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は事実上11月より研究を開始し、研究準備として量子化学計算による近赤外有機半導体の候補化合物の探索から着手した。これまでにリード化合物として検討しているアセンジチオフェンジオン系の関連化合物、またリレンジイミド系化合物について吸収帯の予測とフロンティア軌道のエネルギーレベルを予測した。そのうえで合成を行う標的としてナフトジチオフェンジオン系が有望であることを確認した。溶解性の問題が予想されるため、実際の合成は可溶性置換基を導入したものを標的とすることとし、1月以降、合成の検討を開始した。 一方、本研究におけるデバイス研究、特に近赤外フォトディテクタ―に関するデバイス作製、評価についてはフランス・ボルドー大学のHirsch教授との共同研究で行うことを計画しており、その実行可能性と具体的な実験計画の策定と共同研究契約締結を目的に瀧宮が1月にボルドー大を訪問した。ここで、本研究の枠組みでボルドー大に滞在し共同実験を行う若手研究者(東北大・川畑)の具体的予定、実験・研究施設の確認、デバイス構造と評価システムに関する打合せを行った。また、共同研究締結に関するボルドー大の意向についても詳細に議論し、帰国後、共同研究契約書案を作成し、東北大―理研-ボルドー大での確認作業に入った。 これらと並行して、東北大で太陽電池素子の作製、評価システムの立ち上げ準備に着手し、既設の擬似太陽光源を制御するためのソフトウエアを購入し、予備的に太陽電池を作製、評価できることを確認した。なお、本ソフトウエアは来年度購入予定の近赤外分高感度測定システムの制御にも用いることができる。 さらに、2020年3月約一か月間、川畑がボルドー大で共同実験を行うべく準備を整えていたが、COVID-19感染拡大の影響で断念した。さらに、上記の共同研究契約締結もボルドー大閉鎖のため、契約書確認の段階で進展していない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように当初計画していたボルドー大での共同実験が直前で実施できないこととなり、研究計画書にも記載した本研究における近赤外フォトディテクタ―用のリード化合物をデバイス上で評価ができなかったことは、デバイス開発のみならず、新規な近赤外有機半導体探索の指針を得るうえでも非常に大きな痛手となった。これについては、共同実験が可能になった時点で出来るだけ速やかに実施することが、現在取りうる最善の方法と考えている。 一方、新規材料合成、及び、太陽電池素子の作製、評価システムについてはほぼ当初の想定通りに進展しており、今年度内に擬似太陽光照射下で有機太陽電池の電流-電圧特性評価(光電変換効率の評価)が可能となった。また、来年度設置予定の近赤外光をカバーする分光感度光源と組み合わせることで、波長ごとの外部量子収率も評価できるようになり、近赤外有機半導体を用いた有機太陽電池の実験装置系を立ち上げることについては順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年4月時点で、COVID-19感染拡大の国際共同研究活動への影響は極めて大きく、どの時点で、ボルドー大学に若手研究者を派遣し共同実験を行うことが可能となるか見通せていない。従って、デバイス研究、特に近赤外フォトディテクタ―の検討については予定を立てることが難しくなっている。Hirsch教授をはじめとするボルドー大の研究者とは電子メール等で連絡を取っているが、状況が落ち着いてきてからの対応とならざるを得ない。 一方で、有機太陽電池については来年度内には評価系が準備できると想定しており、まずは近赤外有機半導体の有機薄膜太陽電池への応用を中心に検討を進める。特に、近赤外領域での分高感度測定が可能となれば、フォトディテクタ―のための予備的な材料評価ともなり得るので、太陽電池の検討を中心に研究を進めていく。この目的のため、安価かつ簡便に太陽電池素子を作製、評価できるような素子構成(電極配置、封止法など)の検討、さらには測定効率化のための測定装置の周辺技術の改善を進める。 材料開発に関しても、今年度合成検討を開始した可溶性ナフトジチオフェンジオン系を進めるとともに、ナフトチオフェンジイミド骨格を分子内に組み込んだオリゴマー系を中心に材料探索を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
交付申請時の研究計画通り、研究分担者である東北大学理学研究科の助教、川畑氏は、2020/03/05~2020/03/29の日程でフランスボルドー大学にて実験および測定を行う予定であったが、COVID-19感染拡大により、直前で本出張を延期することとしたため。
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