2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of near-infrared organic semiconductors
Project/Area Number |
19KK0142
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
瀧宮 和男 東北大学, 理学研究科, 教授 (40263735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川畑 公輔 東北大学, 理学研究科, 助教 (10710212)
大垣 拓也 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (80804228) [Withdrawn]
澤本 尚典 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (90880279)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 近赤外吸収 / 太陽電池 / フォトディテクタ― |
Outline of Annual Research Achievements |
COVID-19の影響のため、今年度計画していたフランス・ボルドー大学での共同実験はすべて実施できなかったため、国内での材料合成とデバイス評価体制の構築に注力した。 具体的には、川畑が中心となり、可溶性アセンジチオフェンジオン系材料の開発を実施し、ベンゾジカルコゲノフェノジオン(フラン、チオフェン、およびセレノフェン)系に加え、ナフトジチオフェンジオン系について周辺ドナー部位を順次変化させることで、近赤外吸収領域を制御しつつ、新材料を得ることに成功している。これらの新規材料の半導体特性は電界効果トランジスタ構造により評価されており、近赤外吸収のみならず比較的良好なキャリア輸送特性を持つことを確認している。これに加え、薄膜における分子凝集様式を変化させることで吸収領域の制御を行うことにもチャレンジし、キノイド骨格中央部に適切にアルキル基を導入することで、J会合体様の凝集が実現でき、比較的小さな分子であるにもかかわらず1000nmを超える長波長吸収を実現できることが明らかにできた。更に単結晶構造解析により、アルキル基がどのように分子集合体構造に影響を及ぼすのかも明らかにできており、本分子設計における構造化学的な意義を見出すだけでなく、さらなる長波長吸収の実現に向けて極めて有用な手法であることも確認している。一方、ナフトチオフェンジイミド系においては、澤本を中心に効率的合成法の開発を検討し、市販のナフタレンジイミド誘導体から効率的なチオフェン環構築法とCH活性化を経るカップリング反応によりオリゴマー半導体を効率的に合成する手法を確立できている。 一方、太陽電池およびフォトディテクタ素子の作製・評価技術についてはフランス・ボルドー大チームと打ち合わせを進めており、特に太陽電池については新たに開発した近赤外吸収材料を用いて7%程度の光電変換効率が実現できることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響は本研究の進捗を大きく妨げており、研究の柱の一つである若手研究者によるフランス・ボルドー大での共同実験が全く行えていない。これにより近赤外フォトディテクタの検討が全く進んでおらず、研究はやや遅れている。一方、材料開発は着実に実施しており、当初計画していたアセンジチオフェンジオン系、ナフトチオフェンジイミド系ともに、ほぼ当初の想定通り、もしくは一部は想定以上に進んでいる。特に、アセンジチオフェンジオン系において分子集合状態の制御による長波長化の手法を見出したことは、今後の材料設計に役立つだけでなく、単結晶構造解析により明らかにした結晶中での分子配列との明確な相関から、その学理を詳細に検討することができる分子系としても、大変興味深いと考えられる。今後、共同実験が可能となった段階で速やかに検討に移れるよう、材料の準備を行っていくことを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はCOVID-19の影響のため、計画していたフランス・ボルドー大学での共同実験が実施できず、特にフォトディテクターの作製・評価の進捗に遅れが出ている。そこで本年度は、状況が改善した時点でできるだけ早期に共同実験を実施しフォトディテクターの作製と評価を実施する(川畑担当)。一方、太陽電池デバイスについては、東北大学内に作製・評価系を立ち上げており、これを用いて初年度より継続的に開発している材料の評価を行うとともに、理研で開発した材料に関しては理研で太陽電池の評価を行う(川畑、澤本担当)。 これらに加え材料開発では、これまで検討してきたアセンジカルコゲノフェン・キノイド系において、薄膜中でJ会合形成を誘起するような分子設計が可能となっており、これを用いることで1000nmを超える領域に強い吸収を持つ材料の開発を加速する。J会合形成には薄膜中での分子の凝集状態が鍵となることことから、単結晶構造解析や理論計算の結果も勘案しつつ、より良い分子設計指針を見出し材料開発に繋げる(川畑、瀧宮担当)。また、可溶性ナフトチオフェンジイミド系材料の開発では、原料となるナフタレンジイミド誘導体から5段階(触媒的ヨウ素化、薗頭カップリング、チオフェン環形成反応、臭素化、CH活性化を経るカップリング)の反応を経て、アクセプター―ドナー―アクセプター型のオリゴマーを効率的に合成する手法を確立できたことを受け、ナフタレンジイミド部の可溶性置換基の系統的な検討やドナー部の変更など、材料を系統的かつ網羅的に短期間で合成し、候補材料を探索する。これにおいても吸収領域の予測、フロンティア軌道のエネルギー準位の見積もりには理論計算を活用し、上記の高効率合成法と組み合わせることで有望材料の早期の開発を目指す(澤本、瀧宮担当)。これらを統括し、今後の近赤外有機半導体の設計と応用に関する指針を得る(瀧宮担当)。
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Causes of Carryover |
昨年度はCOVID-19の影響のため、計画していたフランスボルドー大学での共同実験が実施できなかったため繰越額が発生した。 本年度は、状況が改善した時点で、できるだけ早期にボルドー大学にて、Hirsch教授との 共同実験を実施しフォトディテクターの作製と評価を実施する
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Research Products
(1 results)