2023 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおける侵入害虫キャッサバコナカイガラムシの生物的防除の有効性
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19KK0153
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高須 啓志 九州大学, 農学研究院, 教授 (50212006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 俊一郎 九州大学, 農学研究院, 助教 (90725045)
松尾 和典 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (90741281)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 寄生蜂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、カンボジアにおいて野外におけるキャッサバコナカイガラムシの生命表調査を3回行い、キャッサバコナカイガラムシ個体群における野外の死亡要因の解析、寄生蜂の寄生および寄主体液摂取による死亡率を調べた。その結果、昨年までの研究で明らかになった5月~9月の雨期にコナカイガラムシが少なく、10月~4月の乾期にコナカイガラムシ密度が上昇することが再度確認された。また、雨季の寄生蜂の寄生率はこれまでまったく調べられていなかったが、今回、コナカイガラムシが比較的多く発生した圃場では高い寄生率が見られたこと、コナカイガラムシを人為的に設置した植物にトビコバチが飛来し寄生活動を雨期中も継続して行っていた。この結果は、コナカイガラムシ密度が極めて低い雨期でもトビコバチは寄主を効果的に発見寄生しており、雨期の主要な死亡要因である降雨に加え、寄生蜂のよる死亡がこの時期のコナカイガラムシの第二の死亡要因であることが明らかになった。さらに、トビコバチは寄生に加え、寄主体液摂取によりコナカイガラムシを殺す。今回、野外において寄主体液摂取の頻度とその死亡率を調べる方法を確立し、野外において寄主体液摂取によるコナカイガラムシの死亡率の解析が可能となった。2024年度には、開発した方法により野外における寄主体液摂取が害虫個体群低下への貢献度を明らかにする。室内実験では、DNA解析によるキャッサバコナカイガラムシの1次寄生と2次寄生蜂の寄生率を正確に測定する方法を開発し、論文として発表した。この方法では、極めて短時間に寄生率を正確に測定することが可能である。2024年度はこの方法の有効性を野外で確かめる予定である。九州大学では、キャッサバコナカイガラトビコバチの2次寄生蜂の寄主選択行動を調べ、トビコバチ幼虫および蛹に寄生できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究機期間延長の1年目であるが、年度5回カンボジアにおける野外実験を計画していたが、天候不順とそれに伴う実験準備遅れにより2回分野外実験ができなかった。室内の研究が予定通り進み、一部は論文として発表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、最後の研究の仕上げとして、これまでの野外研究で取り残した点(野外における寄主体液摂取率の測定、DNA解析による寄生率調査)を確認するとともに、室内研究(主に2次寄生蜂の生態・行動)5年間の研究成果のまとめを行う。そこで、2回カンボジアにおいて生命表調査を行うとともに、アメリカ昆虫学会で成果を発表するとともに結果をとりまとめ論文として投稿する。
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Causes of Carryover |
2023年度にはカンボジアにおける天候不順および実験準備の遅れにより予定していた野外研究の一部を行うことができなかった。2024年度に2度カンボジアでの現地調査を行い、補足的なデータを取得、研究を完結させる。また、11月に開催されるアメリカ昆虫学会で研究成果を報告する。
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