2021 Fiscal Year Research-status Report
半乾燥地における水環境変動を克服しうる混作農法の創出
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19KK0158
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
飯嶋 盛雄 近畿大学, 農学部, 教授 (60252277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 浩一 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (10263394)
山根 浩二 近畿大学, 農学部, 准教授 (50580859)
廣岡 義博 近畿大学, 農学部, 講師 (80780981)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 混作 / 接触混植 / 亀裂処理 / 季節湿地 / メタン放出 / ウルトラファインバブル / 洪水 / 干ばつ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス(Covid-19)禍により渡航が制限されたため、オンラインによりナミビア、ボツワナ、日本の3ヵ国での試験や研究成果を詳細に打ち合わせ、以下の研究と、研究成果の共同執筆・国際会議での報告などを実施した。① 接触混植試験:ナミビア北部では、ソルガムとトウジンビエの接触混植が農家の自助努力などにより徐々に広がりを見せている。そこで、ナミビア大学オゴンゴ校内の附属農場施設内で、トウジンビエとソルガムの接触混植試験を実施した。農家圃場においても栽培を希望する農家に種子を提供し、農家圃場における栽培試験を実施した。② 亀裂施肥試験:本試験のためにナミビア国で作成した新型の亀裂施肥機をベースにして日本ではコストを考慮し、亀裂処理に特化した新型アタッチメントを作成した。その走行試験を神戸大学等で実施し、今後の普及を検討中である。 ③ ボツワナ大学では、ナミビアから導入したイネ品種群の栽培試験を2019/2020作付け期に開始し、2021/2022まで3か年に渡る栽培トライアルを継続中である。2021/2022からは小規模フィ―ルドでの作付けを開始し、種子の更新と栽培試験を拡大した。 ④ ナミビアとボツワナの研究サイト周辺の農家圃場では季節湿地が形成されるためメタン発生の増大が懸念される。そこで地球温暖化の進行を阻止するためウルトラファインバブル水灌漑によるメタン削減の可能性を議論し、現地への導入を目指したフィールド試験を日本で開始した。 ⑤ 研究成果5報の原著論文がアクセプトされた。 ⑥ 国際学会(アジア作物学会議)で4報の口頭発表と、国内学会(日本作物学会)で2報の口頭発表を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度には研究代表者と研究分担者2名がナミビアに渡航し、計画していた3つの試験を開始し、新規の亀裂施肥機を作成したことに加え、ボツワナにおいても同様な研究展開が開始された。しかし2020年3月から始まったナミビアとボツワナでのロックダウンや、日本も含めた3ヵ国での渡航制限により、オンラインでの打ち合わせと、作業記録書類の作成と会計処理による謝金等の支払いにより現地でのフィ―ルド試験を運営してきた。2020年度は、オンラインによる南部アフリカでの共同研究継続の試行錯誤であったといえよう。2021年度には、その経験を踏まえ、オンラインでも持続的な共同研究が実施できることを認識した。ナミビアでは2002年以来の継続的な共同研究者陣の努力があり、ロックダウンの合間を縫っての数々のフィ―ルド試験実施を達成することができ、共同執筆した原著論文を国際誌に掲載することに成功した。ボツワナでは2014年以来の共同研究であるが、現地研究者の粘り強い努力によりナミビアから導入したイネ品種群の定着が進もうとしており、アジア作物学会議では口頭発表を実施した。時間と労力を費やしての双方の訪問の成果に勝るとも劣らない研究が、対面での十分な信頼関係が醸成されていればオンラインでも実施可能であると考える。さらに、新規の亀裂施肥機を作成する過程で認識した研究アイディアを生かし、日本国で新型の亀裂処理アタッチメントの試作と、フィールドでの試運転を実施した。加えて、ウルトラファインバブル灌漑による南部アフリカの季節湿地の水田化を目指して、基礎的な検討を日本で実施した。2021年度の試験ではメタン削減効果を得たため今後の追試の成果が待たれる。以上の状況から当初計画通りと自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究における最終年度に当たるため、南部アフリカにおける洪水干ばつ対応農法を確立するための研究活動を行う。Zoomによるオンライン協議で共同研究を行う態勢が整えられたため、日頃のコミュニケ-ションにより研究活動を続ける。日本側研究者は、今後の協力継続を確かなものとするため、Covid-19感染状況と南部アフリカ地域への渡航に関わる種々の課題を克服できる場合には、ナミビアとボツワナへの渡航を目指す。本研究期間中は干ばつ傾向が続いたためトウジンビエとソルガムの接触混植を優先して実施した。これまでの成果を考えると、この組み合わせが当地では有望であると考える。従って、最終年度もこれまでと同様に種子の配布を行い、栽培方法とソルガムの乾燥耐性強化について農家に理解していただき農家圃場での栽培試験を拡大する。その試験運営状況を見て最終的な自己評価を行う。日本で実施した亀裂施肥と接触混植の基礎的な検討についても公表するに値する成果が得られたため、繰り返し試験を実施し原著論文の執筆を目指す。新たに開発した亀裂処理アタッチメントは日本での基礎試験結果から亀裂処理能力が極めて高く、しかも単純な構造であるため、引き続き改良を加えるための日本での基礎試験を実施する。これらの日本での基礎的な検討成果を、ナミビアでの展開にフィードバックすることを目指す。ボツワナでは、提供したイネ品種群の生育試験が軌道に乗り、小型圃場での栽培も実施した。共同研究者のイネ栽培技術が向上した成果である。ボツワナの研究者・技術者が独自に水稲栽培を自国に根付かせるために必要なことを協議し、ナミビアで成しえたような稲作導入を当地に拡大することを目指す。ナミビア、ボツワナ両国の季節湿地からのメタン削減と、湿地の水田化を目指した基礎試験を前年度に引き続き日本で実施する。
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Causes of Carryover |
Covid-19変異型オミクロン株が南アにおいて初めて報告され、ナミビアとボツワナへの渡航が困難になった。またナミビアやボツワナからの招へいも困難であると判断した。本研究協力者も複数名がCovid-19に感染し、中途での活動の休止を余儀なくされた方もみえた。以上の諸状況から、ナミビアとボツワナの試験研究実施だけでなく、日本での基礎試験にも注力した。その結果、日本での基礎研究を継続することにより原著論文の執筆の可能性が生じた。さらに、本研究の趣旨から考えて、今後、日本での研究成果をナミビアやボツワナをはじめとする南部アフリカ諸国への展開につなげていく必要がある。そのため引き続き日本での基礎試験の継続をする。以上の理由から、次年度の予算使用が生じた。 ナミビア、ボツワナ、日本でのフィ-ルド試験運営に予算を使用する。新型の亀裂施肥機の改良とともにウルトラファインバブルを用いた水稲栽培の可能性についても追及する。ウルトラファインバブルはナミビアやボツワナの季節湿地の水田化に貢献しうるポテンシャルを秘めているため、基礎的な展開を重点的に実施し、ナミビアとボツワナにフィードバックすることを目指す。新型の亀裂処理機は、日本での社会実装の可能性もありうることが判明したため、そのための機器の改良と基礎試験も実施する。
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