2021 Fiscal Year Research-status Report
A multi-scale, multi-physics modeling framework to predict and design biomaterials based on FINEST observation
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19KK0169
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 史彦 九州大学, 農学研究院, 教授 (30284912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 良奈 九州大学, 農学研究院, 助教 (80817263)
今泉 鉄平 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (30806352)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 農業工学 / マルチスケール / シミュレーション / イメージング / ポストハーベスト工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も渡航が困難であり、ネットを通じた研究遂行となった。 まず、(1)ナノスケール観察では、農産物内在ペクチンの状態について調査した。特に、農産物由来ペクチンに対するカルシウムの作用を調査した。ニンジン由来水溶性ペクチン(WSP)、キレート可溶性ペクチン(CSP)、希アルカリ可溶性ペクチン(DASP)の中性糖割合を測定、DASPは側鎖が多く存在し、CSPは側鎖が少ないペクチンであることを示した。また、FT-IR分析の結果、CSP、DASPではメチルエステル化度が低いことを示した。各ペクチン画分に複数濃度のカルシウムを施用しAFM観察を行うことで、粒子状構造を示すWSPで粒子径や高さが増大、CSPとDASPにおいては繊維状構造を示し、架橋構造形成により繊維径が増大することを明らかにした。CSPはDASPより凝集体の成長度が大きくなり、側鎖割合の違いによる影響が認められた。以上、カルシウム添加は細胞壁中のペクチンネットワーク形成を促進することを確認した。本結果は、ポリマーの集積予測の基礎となる。加えて、微細構造設計に基づく最高な(FINEST)材料製造では、生物由来高分子繊維を骨格とし、疎水性と抗菌性を強化するための各種精油、可塑剤、ナノ金属粒子などを様々な比率で混合することで用途に応じた機能性を持つ材料をデザインすることに成功した。 つぎに、(2)マイクロスケール観察では、マイクロスケール観察では、X線μCTを用いた2、3次元構造解析をカキ果肉について行い、ガス移動解析を行うことで安定した有効拡散係数を算出するための適切な領域サイズを明確にするとともに、細胞壁・膜の寄与、諸物性値空間分布を考慮したより現実的な拡散現象予測を行った。 最後に、(3)FINEST解析フレームワークの構築では、マルチスケール解析により青果物の各種物性値時空間分布を非破壊で計測する方法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度から世界的なコロナウイルス感染拡大による渡航制限により、主目的である長期在外研究は達成できていない。このため、ネットを通じたやりとりで研究を遂行している。しかしながら、これまで長年、共同で進めてきた研究の実績と双方の渡航の経験から、若手育成を視野に入れた共同研究は順調に進んでいる。 三つの中課題のうち、(1)AFMによる各種生物材料のナノ構造の観察では、受入機関研究者の指導の下、引き続き順調AFMによる微細構造解析データの蓄積を行っている。ナノレベルでのマルチフィジックス・シミュレーションの基礎モデル開発にも取り組んでいるが、やはり、現地での直接の専門家による指導と技術習得が必要であると考える。 つぎに、(2)X線μCT による生物材料のミクロ構造解析については、日本側の研究者が主体となるため、画像解析ならびに各種シミュレーションモデルの構築は問題無く進んでいる。 最後に、(3)FINEST解析フレームワークの構築については、(1)と(2)の結果を繋ぐキーパラメータの検索も引き続き継続中である。 以上、公表論文や発表業績が示す通り、予定以上に成果も上がり、総合的に判断すると研究自体は概ね計画通りに遂行されているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
先に示した3中課題について、(1)では、引き続きAFM測定と画像分析を専門とするZdunek教授、Cybulska研究員他とのサブユニットを構成し、ナノスケール観察データの蓄積と分析、ならびに、ポリマー集積モデル化を推進して行く。特に、ペクチン分子の化学組成解析を進める。つぎに、(2)については、引き続き“Green”な生物材料の構造解析・設計を進めるとともに、不均質なFINEST空間における諸現象を解析するモデルを高度化して行く。(3)については、 (1)と(2)で遂行する研究をそれぞれの要素技術を統合することで体系化し、マルチスケールの場をつなぐ連成解析を目指す。 以上のように、研究の方向性は継続するが、渡航制限が解除されるまでは、当面、ネットを介した情報交換により研究を遂行せざるを得ない。在外研究がさらに次年度にずれ込むことも視野に入れた対応や予算施行の緩和が可能であれば希望したい。
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Causes of Carryover |
初年度からコロナウイルス感染拡大による渡航制限により複数年度にわたり在外研究が見送られている。このため、特に、旅費について毎年度繰越額が生じている。この分は次年度に滞在期間を調整したり、受入機関のみが所有する機器等を予算計上したりするなど措置を講じたい。現在のところ、相手機関の受け入れは難しいとの判断であるが、これが困難な場合は、さらに研究期間の延長も希望する。
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Research Products
(16 results)