2021 Fiscal Year Research-status Report
Principle of body malfunctioning through local cell division failure
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19KK0181
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上原 亮太 北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (20580020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚田 祐基 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (80580000)
松尾 和哉 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90764952)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / 染色体 / 光制御 / ゼブラフィッシュ / マルチスケールイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゼブラフィッシュ胚を材料に、生体局所の少数細胞の細胞分裂制御の異常が、個体発生や生体機能に及ぼす影響を定量的に明らかにして、細胞分裂の障害に起因した病態形成の原理の理解に資することを目的としている。2021年度は、前年度に確立した光照射依存的な細胞分裂の阻害技術を用いて、光照射部位の制御によって生体の局所のみで細胞分裂異常を導入する手法の確立を目指した。このために、多様な局所光照射パターンが胚細胞の分裂進行に及ぼす影響を評価した。この結果、光照射領域において細胞分裂阻害を引き起こすために十分な光量を照射すると、非照射領域でも分裂阻害が引き起こされ、逆に非照射領域における分裂阻害を回避できる程度に光量を抑制すると、照射領域の分裂阻害効率も大幅に低下してしまうことが明らかになった。そこで、より均質な光照射条件で検証が可能な哺乳類培養細胞を材料として、光源の種類、照射光波長、さらに光照射領域のサイズや照射パターンを系統的に変更し、光照射条件の最適化を試みた結果、照射領域で発生する分裂阻害型化合物が、非照射領域へ速やかに拡散することが、コントラストの高い局所分裂阻害の妨げになっている可能性が示唆された。この結果をもとに、次々項に詳述する背景光の導入による周辺領域の分裂阻害解除法を着想し、現在この手法の最適化に取り組んでいる。 また、マルチスケールイメージングシステムについて、昨年度までに構築した2光軸顕微鏡による低倍率広域観察像の細胞位置情報をもとに、同顕微鏡の高倍率三次元光学系による撮像位置をリアルタイムフィードバック制御するプログラムを構築した。 さらに、昨年度から着手している光学異性化特性の異なる複数種の分裂期モータータンパク質光応答性阻害剤の作成、細胞内評価をさらに進め、新規化合物の一部について学術誌への発表に漕ぎ着けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の主目的であった局所光制御による随意の少数細胞への分裂異常導入に関して、上述のように再現性とコントラストの高い空間制御を実現できていない点で、進捗にやや遅れが出ていると評価する。一方で、2021年度の詳細な条件検討により、この問題の原因が、阻害型化合物の拡散によるものである可能性を特定しており、すでにこの問題の解消のための具体的方策を立て、検証に着手している点で、2022年度上旬には、上記問題を解消し、計画の遅れを取り戻すことができると考えられる。また、異なる光異性化特性の化合物の作出と、顕微鏡システムの開発は計画どおりに進行することができたことも合わせ、計画の遅れは最小限の規模に留まっていると判断される。 日印双方の新型コロナウィルス感染の高どまりの状況を受け、受け入れ研究機関との人的交流は引き続き制限を受けたが、前年度までの方針変換による日本側研究設備の充実とオンライン連携により、2021年度も実験実施面では、この影響を最小限に抑えることができた。一方、プロジェクトに参画中の若手研究者・学生人材のトレーニング、研鑽の観点からは、社会状況変化に合わせて可能な範囲で物理的な交流の早期再開を図ることが望ましいと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、光制御による細胞分裂阻害導入の空間分解能を向上させるために、光応答性分裂阻害剤を阻害型に変換させる可視光の照射に加え、分裂阻害を誘導しない周辺部位へ、阻害剤を非阻害型に変換する紫外光照射を施し、非阻害領域に流出する化合物を確実に非阻害型に変換できるようにする。この2色光照射法の条件を最適化し、安定に高いコントラストでゼブラフィッシュ胚局所に細胞分裂異常を誘導できる胚操作系を確立する。この実験系を用いて、細胞分裂阻害の規模(細胞数)、胚における導入箇所、導入時期に変化させて、それぞれの条件が胚発生や組織恒常性に及ぼす影響を系統的に解析する。本段階より、胚形態や組織機能に関する多角的な表現型解析を要することから、随時日本側研究者のインド受け入れ機関への派遣を検討し、スムースな研究展開を図る。
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Causes of Carryover |
2021年度上半期および下半期におよぶ新型コロナウィルス感染拡大に付随した長期の活動制限によって、とくに共用顕微鏡の使用を必要とする胚実験の一部計画を一過的に見送る必要が生じ、それに伴う予算執行全般の後ろ倒しが生じたため、当該分の予算額が未使用となった。すでに、これらの未実施項目の実施調整は済んでおり、2022年度の胚操作・観察実験に当該予算額を充てる計画である。
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Research Products
(9 results)