2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of epigenome infertiity mechanism by the state-of-art single cell and ultrtrace histone modification methods
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19KK0183
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
大保 和之 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70250751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富澤 信一 横浜市立大学, 医学部, 講師 (00704628)
鈴木 絢子 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00770348)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / 幹細胞 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
個体の一生涯、精子幹細胞が、精子産生を支持する。これまで、精子幹細胞の同定や性状解析には、特異的に発現する転写因子や受容体、分泌蛋白分子の解析が中心であった。しかし、幹細胞の分化制御機構に、近年急速に解析が進行し、様々な新知見が得られているエピジェネティクス制御機構がどのように関わっているのか、その多くは未だ明らかとなっていない。私どもは、これまで幾つかのエピジェネティックな因子が、精子幹細胞の分化制御機構に作用していることを見出してきたが、それは氷山の一角に過ぎないと考えている。そこで、独自に開発した手法で、様々なヒストン修飾酵素の遺伝子改変マウスを、次々に作出しているドイツのグループと共同研究を行うことにより、精子幹細胞からの分化異常を起こすヒストン修飾酵素を同定することを行なっている。また、英国との共同研究では、最新のマルチオミクス・シングルセル解析手法を取り入れることにより、より特徴のある細胞を正確に同定することを試みている。現在、最も一般に行われているシングルセル解析は、主に、遺伝子発現を検索するscRNA-seq法が用いられている。近年、シングルセルレベルで、オープンクロマチン領域を同定する解析も広まりつつあるが、それぞれの実験は、別々の細胞を用いて単独で行われている。遺伝子から蛋白が形成されて初めて、その分子は機能する。したがって、遺伝子発現だけでの幹細胞分化過程の解析は、時に誤った結論に結びつくことが見受けられる。そこで、同一細胞から、遺伝子発現の解析ばかりでなく、DNAのメチル化や、ヒストン修飾などの変化の結果を反映するヌクレオソームの間隔などの違いを調べる手法を用いることにより、より正確な細胞の分化度の評価が可能となると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の時点での予測と異なり、今年度もコロナ感染症の問題が遷延し、英国、ドイツともに渡航が非常に困難な1年が継続した。特に、ドイツとの共同研究は、生きた動物を多く用いる実験が主であるため影響が大きかった。ドイツの研究施設では、動物施設に研究者が入室できない仕組みであり、すべて厳密な動物施設側の管理下にあるため、動物施設職員の出勤制限などの影響が長引いた。それに伴う、実験動物の飼育規模縮小が行われたため、マウスコロニーの再構築予定に著しい遅延が生じた。また、ここ数年、日本とは異なるレベルでの実験動物への動物愛護の考え方が広まっており、コロニー再構築と実験の遅れに拍車がかかっている。英国との共同研究は、基本的な一部の技術は以前習得していたことと、生きた動物由来の材料は国内で準備する内容であったため、zoomなどを用いた情報交換を続けることにより、大変効率は悪かったが一定の進捗をみた。c-Kit陰性、陽性の精子幹細胞/前駆細胞分画を、FACSにより96穴プレートにシングルセルソートし、scNMT法に供した。情報提供を受けたプロトコールに従って、一個の細胞から、DNA、RNAを分離し、遺伝子発現、DNAメチル化、クロマチンアクセッシビリティーについて一通りの解析プラットフォームが完成しつつある。現在、データ解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ、ウクライナ戦争などの社会情勢や、出入国の制限、国内の感染状況、大学、家族の理解などの因子により将来計画は流動的であるが、現在のところドイツには、令和4年度秋に、第一回目の渡航を計画している。この際に、候補分子群のそれぞれの遺伝子欠損マウス精巣の組織学的解析を集中して施行すると共に、これら遺伝子改変マウス精巣より、今後のエピジェネティカルな分子機構解析に用いる精子幹細胞株を樹立し、持ち帰る予定である。持ち帰った精子幹細胞株は、標的分子を欠損させることにより、ヒストン修飾の変化を同定するとともに、精子幹細胞株における遺伝子発現変化など調べる予定である。これらのデータを統合することにより、標的ヒストン修飾酵素の精子幹細胞分化における役割を知ることができる。また、マルチオミックスシングルセル解析のほうは、手法が特殊であるため、渡航可能な環境が整えば、是非、現地でデータ解析を、直接指導を受けながら施行することを計画したい。また、シングルセル解析の実験についても日進月歩であるので、特に進化している部分、zoomなどで十分に理解できなかった部分を中心に現地で指導を受けて、より多くの細胞を処理したい。また、現地では、一部の過程をロボット化しているので、そのような施設も利用できればと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ感染の遷延により、英国、ドイツともに渡航ができなかった。今年度に行う予定であった研究計画を、感染の状況を考慮しながら、できるだけ来年度に行う予定である。
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Research Products
(4 results)