2019 Fiscal Year Research-status Report
フォルニカータ生物群におけるミトコンドリア関連オルガネラの機能進化の解明
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19KK0185
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋本 哲男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50208451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久米 慶太郎 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70853191)
千葉 洋子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (70638981)
神川 龍馬 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (40627634)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | ミトコンドリア関連オルガネラ / プロテオミクス / フォルニカータ / 嫌気環境適応 / 機能進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験研究においては、MROの精製とプロテオミクス解析の対象とするフォルニカータ6生物種のうち、4生物種に関する解析を行い基盤データの蓄積に貢献することができた。解析が最も進んでいるKipferliaについては、MROのマーカーとなるシャペロニン(CPN60)に特異的な抗CPN60ペプチド抗体の作製に成功し、スクロース密度勾配超遠心によりMROに富む画分を得る条件を確立することができた。バクテリアタンパク質の混入も少ないことが確認されたため、iTRAQ法によりMRO画分の予備的なプロテオミクス解析を試みた結果、約1000のタンパク質が同定されそれらのリストの中にTrichomonasやGiardiaで既知のMROタンパク質の大部分が含まれていることを確認した。しかしながら、リストの中には明らかに細胞質局在と考えられるタンパク質も数多く存在したため、今後、iTRAQ法の条件を変えた再解析が必要である。一方、DysnectesおよびAduncisulcusについてディープシーケンシングによるゲノム・トランスクリプトーム解析を実施し、高品質の配列データを得た。Roger研では、分担者の神川の協力のもとCarpediemonasに関するゲノム・トランスクリプトーム解析を進め高品質の配列データを得た。データ解析研究においては、フォルニカータ生物群および近縁の生物群のすべてのタンパクコード遺伝子のアミノ酸配列情報をたやすく検索できるようにするためのデータベース構築を行った。それに際し、公的データベースから抽出した既存のデータに日本側とRoger研の未発表データを統合した。さらに、ミトコンドリア(Mt)・MRO関連タンパク質のリストを作製し、その一部のタンパク質についてホモログを探索し分子系統解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験研究面では、KipferliaのMROの精製の過程で最難関と考えられた、餌バクテリアからの夾雑物を極力抑えることに成功し、大きなブレークスルーを果たした。また、Dysnectes、Aduncisulcusに関しても純度の高いDNA/RNAの抽出に成功し高品質のゲノム・トランスクリプトームデータを得ることができた。これらのことから、R1年度における日本側の実験については順調に進行し成果が上がっていると考えられる。Roger研においても、Carpediemonasのゲノム・トランスクリプトーム解析を順調に進めることができている。データ解析研究面では、今回のプロテオミクス解析対象6生物のうち4生物(Kipferlia, Dysnectes, Aduncisulcus, Carpediemonas)を含むフォルニカータ生物群および近縁生物群の全タンパク質コーディング遺伝子のアミノ酸配列情報をデータベース化することができ、データ解析の基盤が構築できた。また、一部のMt・MROタンパク質の分子系統解析の成果も出ており、分子進化解析についても順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
R1年度に引き続き、フォルニカータ生物6種を対象に、MROの機能の進化を推測するための基盤データの取得に関する実験研究とそれによるオリジナルデータを含めたデータ解析研究を進める。とくにR2年度の実験研究においては、MROの精製とプロテオミクス解析に関する方法論の確立に重点的に取り組む。橋本研・千葉研においてKipferliaのMROのプロテオミクス解析を完了するとともに、Dysnectesにおいても同様の方法論を用いて解析を進める。その方法論・技術をRoger研に移転しChilomastixにおけるMROの精製とプロテオミクス解析に挑戦する。Roger研ではプロテオミクス解析への試みと並行して、Chilomastixに関する高品質なゲノム・トランスクリプトームデータを取得する。さらに、R2年度内にMROのプロテオームのデータを得る予定である3生物について、MROタンパク質を3個程度選びそれらに対する抗体を作製し、免疫蛍光抗体法によりそれらのタンパク質が確かにMROタンパク質であることを証明する。R3年度以降は、R2年度までのプロテオミクス解析・細胞生物学的解析の成果に基づき、残りの3生物、Aduncisulcus, Carpediemonas, Retortamonasに関する解析を進め、MROのプロテオームに関する基盤データの蓄積を完了する。一方、実験的研究とは独立に全生物界を対象にMt・MRO関連タンパク質の配列データや立体構造データの網羅的かつ適切なサンプリングによる収集に努め、随時、本課題におけるオリジナルデータと併せて分子進化学的解析が行える体制を維持していく。このような方策により、今後、実験・データ解析の両面からMt/MROの進化過程の全体像を明らかにし、嫌気環境適応によるMt機能の縮退進化やMRO機能の進化にどのような多様性・普遍性があるかを探っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延に伴う物品納品の遅れが見込まれたため、実験研究およびデータ解析研究に必要となる消耗品の一部について、R2年度以降に購入することとした。次年度使用額については、主として物品費として使用する予定である。
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