2021 Fiscal Year Research-status Report
淡水・沿岸魚類の系統地理構造に基づくインドネシア島嶼域の生物地理区境界線の検証
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19KK0190
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
熊澤 慶伯 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60221941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 望生 東海大学, 生物学部, 准教授 (50724267)
渋川 浩一 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 教授 (30435739)
スティアマルガ デフィン 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (50625259)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | インドネシア / 生物地理学 / ウォレス線 / 魚類 / 系統分類 / 分子系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の影響で、日本側研究者がインドネシアを訪問して現地調査を実施できなかった。そこでインドネシアおよびタイの研究協力者による魚類サンプル採集を複数回実施した。インドネシアでは、9月-10月にジャワ島東部・中部、スマトラ島西部、ボルネオ島南部、バンカ島で、12月-2月にジャワ島中部・西部、スマトラ島東部・西部、バンカ島でサンプルを収集した。一方タイでは、10月-12月にマレー半島の西岸に位置するプーケット県・ラノン県、マレー半島の東岸に位置するソンクラー県、首都バンコク周辺の数県でサンプル採集を実施した。主要河川の河口域や湖沼を中心に、ハゼ目のハゼ科・オクスデルクス科・ノコギリハゼ科・カワアナゴ科などを構成する約50種の淡水・汽水魚類標本を採集できた。また、スズキ目20科の約40種を中心とした沿岸魚類の標本も収集できた。 これらの標本の一部は、インドネシア政府またはタイ政府の許可を得て、研究代表者の研究室に提供され、本科研費研究課題の研究協力者になっている留学生を中心に、国際共同研究体制のもとで系統分類学的研究を行なった。組織標本については、そこからDNAを抽出して、ミトコンドリアDNAにコードされるシトクロムオキシダーゼサブユニットI遺伝子の塩基配列を決定し、分子系統解析を実施した。ホルマリン固定された体標本については、形態学的な分析を行い、既存の分類学的情報による種同定と分子情報に基づく系統関係の対比を行った。ハゼ目オクスデルクス科ゴビオプテルス属やスズキ目ツバメコノシロ科ミナミコノシロ属などの分類群において、従来の分類学的情報では認識できていなかった新種がいることを示唆するデータが得られた。 一方、本科研費研究課題の国際共同研究チームのメンバー間の情報交換を行うために、zoomを利用した科学セミナーを3月7日に公開で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症による影響がまだ収まっておらず、海外渡航が不可能となっている。現地研究者との緊密な連携により、野外調査・サンプル採集を行ない共同研究を進めつつあるが、日本側研究者が渡航しての共同調査ができていないという意味において、当初計画した通りには進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の影響を見ながら、現地研究協力者の助力のもとでサンプル収集を継続し、さらに広い産地をカバーした標本を集めていく。ジャワ島の標本はこれまでにかなり集まっているが、スマトラ島・ボルネオ島のサンプルはまだ一部の地域をカバーしているだけであり、ウォレス線の東側に位置する島からはまだほとんどサンプルを得られていない。今年度は、これらの地域をカバーするサンプリングを目指したい。採集されたサンプルの分析は、ブラウィジャヤ大学の研究室と日本側研究者の研究室で分担し、分類学的な研究と系統地理学的な研究を並行して進めていく。今年度中には、日本魚類学会等での関連演題の発表や研究論文の投稿を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で日本側研究者の海外渡航が困難となり、外国旅費を執行できなかったことが主な原因である。しかし、このような状況の中でも、現地研究協力者の助力のもとでサンプル採集は進んでおり、インドネシア政府の許可のもと、組織標本・体標本の日本送付も実現するようになった。今年度からは野外採集の経費に加え、分子実験の経費が増えてくるため、研究経費の執行は当初予定に近づくと考えている。
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