2022 Fiscal Year Research-status Report
淡水・沿岸魚類の系統地理構造に基づくインドネシア島嶼域の生物地理区境界線の検証
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19KK0190
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
熊澤 慶伯 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60221941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 望生 東海大学, 生物学部, 准教授 (50724267)
渋川 浩一 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 教授 (30435739)
スティアマルガ デフィン 和歌山工業高等専門学校, 生物応用化学科, 准教授 (50625259)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | インドネシア / 生物地理学 / ウォレス線 / 魚類 / 系統分類 / 分子系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度も特に前半は新型コロナウイルス感染症の影響で、日本側研究者がインドネシアを訪問して現地調査を実施することが難しかった。そこでインドネシアおよびタイの研究協力者による魚類サンプル採集を複数回実施した。インドネシアでは、6月-8月に主にスマトラ島の広範な地点で、1月-3月にジャワ島・スマトラ島などいくつかの島でサンプリングを実施した。また、3月には研究協力者のMr. Kholil(研究代表者の研究室に所属する国費留学生)がボルネオ島に行き、サンプリングを行った。大小河川の河口域や湖沼を中心に、ハゼ目のオクスデルクス科などの科を構成する約20種の淡水・汽水魚類標本を採集できた。また、スズキ目の様々な科に属する約15種を中心とした沿岸魚類の標本も収集できた。採集されたサンプルがカバーする魚種数は前年度より少ないが、これは研究する対象魚を絞り込んでサンプリングを行ったためである。 これらの標本の一部は、インドネシア政府またはタイ政府の許可を得て、研究代表者の研究室に提供され、国際共同研究体制のもとで系統分類学的研究を行なった。組織標本については、そこからDNAを抽出して、ミトコンドリアDNAにコードされるシトクロムオキシダーゼサブユニットI遺伝子の塩基配列を決定し、分子系統解析を実施した。ホルマリン固定された体標本については、形態学的な分析を行い、現行の分類学的情報による種同定と分子情報に基づく系統関係の対比を行った。ハゼ目オクスデルクス科やスズキ目ツバメコノシロ科などの分類群において、従来の分類学的研究では認識されていなかった新種の存在が示唆されており、それについて詳しく分子系統学的・形態学的解析を行った。 本科研費研究課題の国際共同研究チームのメンバー間で研究成果を共有するために、zoomを利用した科学セミナーを7月と12月に公開で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症による影響で、日本側研究者が現地での野外調査を実施できなかったこと(年度末の1回の渡航を除く)、現地からのサンプル持ち出し許可が煩雑だったことなどが誤算であった。しかし、現地研究者との緊密な連携により、サンプル採集は軌道に乗ってきており、それらのサンプルを分析した研究成果もしっかり出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までにインドネシア島嶼域の主な採集地点からのサンプリングは一通り終えている。サンプル採集地点が多いほど、精度が高い系統分類学的情報が得られるので欲を言えばきりがないが、今年度は対象魚種の数を絞り込んだ上で、サンプリングよりもデータの分析・取りまとめに重点を置いて研究を行う。採集されたサンプルの分析は、ブラウィジャヤ大学の研究室と日本側研究者の研究室で分担し、形態情報と分子情報の両方に立脚した系統分類学的な研究と系統地理学的な研究を並行して進めていく。さらに、研究成果を取りまとめて学術雑誌に投稿するとともに、日本魚類学会等の発表機会で関連演題を発表することを目指す。これらの研究結果に基づきもし必要性が生じれば、追加的な小規模のサンプリングを実施することも考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で日本側研究者の海外渡航が困難となり、外国旅費を予定通り執行できなかったことが主な原因である。しかし、このような状況下でも、現地研究協力者と連携してサンプル採集は進んでおり、インドネシア政府の許可のもと、標本の日本送付も実現している。今年度は野外採集の経費は減るが、分子実験の経費が増えると予想されるため、研究経費の執行は適正に行えると考えている。
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