2020 Fiscal Year Research-status Report
Trans-Kingdom RNA Interference Elicited by Thai Traditional Medicinal Plant-derived MicroRNAs for Anti-Inflammation
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19KK0196
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
島岡 要 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40281133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴 恩正 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (20644587)
高娃 阿栄 三重大学, 医学系研究科, 助教 (50643805)
伊藤 亜紗実 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (80740448)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Keywords | RNA干渉 / マイクロRNA / 薬用植物 / 腸管免疫 / 細胞接着 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模な薬用植物園を擁し、正統なタイ薬用植物を用いた伝統的医療の中心である国立タマサート大学と三重大学は医学分野の研究と教育面で協力する協定を正式に締結している.代表研究者の島岡は本協定のもとタマサート大学医学部准教授でタイ伝統医療応用科学センター長のItharatと公式に共同研究を行い、大学院生や客員研究員を受け入れトレーニングし、人材育成での貢献をするとともに、国際共同研究ネットワークと研究プロジェクトの基礎を築いてきた. 薬用植物の多くは、優れた効能にもかかわらず、薬効成分や作用機序は不明であり、科学的な解明が重要な課題である.植物由来マイクロRNAはエピジェネティックな制御性因子として細胞内で機能するだけでなく、エキソソームに乗って異種細胞にも伝搬し、種を超えた「トランス・キングダムRNA干渉」を誘導し、植物の生体恒常性維持に貢献しているが、ヒトへの効果は不明である.本研究では「薬用植物エキソソームに含まれるマイクロRNAが、その薬効(特に抗炎症効果)を発揮する重要成分である」という学術的な仮説を検証する.タマサート大学医学部・タイ伝統医療応用研究センター長Itharat准教授との国際共同研究により、タマサート大学薬用植物園で栽培されている希少な薬用植物よりエキソソームを分離し、炎症性腸炎の治療標的であるICAM-1, MAdCAM-1, インテグリン、TNFの発現を抑制する効果をもつ植物マイクロRNAを同定する.同定されたマイクロRNAを豊富に含む薬用植物由来エキソソームを、マウス炎症性腸炎モデルに経口または経腸投与し、抗炎症効果を検証する.本国際共同研究を遂行することにより、炎症性腸炎の新規治療法につながる学術的知見を獲得することに加え、薬用植物の作用機序解明の分野で鍵となる重要な人的ネットワークを構築する波及効果も期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症の拡大により、タイ・タマサート大学現地に出向いて直接実験を行うことができないために、様々な補完的アプローチにより研究を進めている。そして遠隔で共同研究を推進するシステムを構築した。遠隔での研究プロジェクトをディスカッションするため毎週2回の研究ミーティングと、ラインWorksを活用したセキュアでリアルタイムの情報交換を行っている。このアプローチにより効果的に国際共同研究を推進してきた。 タイ薬用植物モデルを用いて細胞外小胞を分離する方法を確立した。モデルとして用いたしょうがは、タイ薬用植物と種属の範疇の大枠ではオーバーラップするものであり、植物マイクロRNAの構造上もモデルとして適切であることをサポートする予備データを獲得した。そのデータをもとに植物マイクロRNAのうちトランスキングダムRNA干渉により、ヒト細胞の治療標的分子mRNAの発現を抑制すると予測されるマイクロRNAをバイオインフォマティクス解析により複数同定することができた。 植物マイクロRNAの標的分子の中には、新型コロナウィルス感染症による急性肺障害の治療に使える可能性のある分子も含まれていることがわかってきた。特にインテグリンは新型コロナウィルスの細胞侵入受容体としてACE2と協調して機能している可能性が報告されてきた。我々もこのコンセプトを支持するデータを肺上皮細胞を使って証明している。 細胞外小胞が生体内で微小環境をリモデリングすることにより、免疫細胞の臓器特異的ホーミングのバランスを制御していると同時に、そのバランスの破綻が様々な疾患につながる可能性をコンセプトとしてまとめて発表している。タイ薬用植物による種を超えたエピジェネティックな制御が、微小環境のリモデリングのバランス制御に貢献している可能性を示唆することを総説論文として発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
本国際共同研究の目的は申請時と同じであり、タマサート大学の薬用植物のコレクションから、抗炎症活性を発揮するマイクロRNAを同定し、炎症性腸疾患マウスモデルで、その効果を検証することである.「機能的マイクロRNAを含む植物由来エキソソームが、腸管粘膜内標的細胞(腸管上皮細胞、マクロファージ、血管内皮細胞)に作用し、炎症性腸炎標的分子ICAM-1の発現を抑制する」ことを抗炎症作用機序として想定する.さらに炎症性腸疾患に治療効果のある植物由来マイクロRNA同定の過程で獲得するノウハウを生かして、タイ薬用植物より様々な疾患に対して薬効のあるマイクロRNAを同定するための創薬研究システムを構築し、「トランス・キングダムRNA干渉の治療への応用」や「薬用植物研究」の創薬領域において、国際的課題に応えるグローバル研究を担う若手研究者の養成を目指し、強い人的ネットワークを構築する波及効果を引き起こすことも目的とする。 そのために、新型コロナウィルスの感染収束状況に依存して対面式の共同研究を推進する予定である。また万一感染拡大状況が持続すれば、遠隔で共同研究を推進するアプローチも併用して、多角的にリスクヘッジしつつ研究を推進する。タイ・タマサート大学との人材交流の計画はすでに決定しており、国境管理の状況に応じて実行する。またモデル植物を使った研究システムの構築は引き続き推進する。特に炎症性サイトカインの分泌への影響に加えて、メカノトランスダクションを司る分子でもあるインテグリンのアウトサイドイン・シグナルのハブの一つであるフォーカル・アドヒージョン・キナーゼ(FAK)を介したシグナル伝達への影響を探索する。その実験系の基礎となるシステムとして、新規リガンドであるイリシンとインテグリンの相互作用を用いる計画である。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウィルス感染症拡大により、海外出張ができなかったため (使用計画)タイへの海外渡航の緩和状況と、大学職員の海外渡航許可状況に応じて、柔軟に対面とオンラインのバランスを取った共同研究を推進する
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