2019 Fiscal Year Research-status Report
高いスケーリング性能と高精度性を併せ持つ次世代固有値・特異値分解ライブラリの開発
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19KK0255
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 有作 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20362288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 周平 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (50824421)
今倉 暁 筑波大学, システム情報系, 准教授 (60610045)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 固有値計算 / ブロックヤコビ法 / 非負行列分解 / 機械学習 / 並列計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
並列計算に適した固有値・特異値分解の計算法であるブロックヤコビ法について,収束性・計算誤差などの理論的解析と,並列計算機上での高性能実装を進めている。今年度は,理論面に関して,特異値分解向け片側ブロックヤコビ法における計算の中心部分である列ブロックの直交化演算の誤差解析を行った。特に,Cholesky QR法と呼ばれるアルゴリズムを用いた直交化について理論的に考察した。Cholesky QR法は高速な直交化アルゴリズムであるが,一般的には不安定で誤差が大きいとされる。ところが,片側ブロックヤコビ法の直交化に用いた場合には,この不安定性が顕在化せず,高精度な結果が得られる。この現象について解析した結果,片側ブロックヤコビ法での直交化では,列スケーリングした列ブロックの条件数が反復とともに急速に小さくなり,それが不安定性の解消をもたらすことを明らかにした。本成果については,論文を投稿中である。一方,実装面では,共同研究先のスロバキア国立科学アカデミーが作成した片側ブロックヤコビ法の並列コードに,理化学研究所で開発する高速演算カーネルのコードを組み込み,全体の高速化を図る予定であったが,平成31年度の成果としては,高速演算カーネルの開発までに留まり,並列コードへの組み込みと性能評価は令和2年度に行うことになった。
また,もう一つのテーマとして,行列計算を基盤とした機械学習法の研究を行っている。今年度の研究課題としては,非負行列分解を基盤としたディープニューラルネットワーク計算法および複数固有ベクトルを利用した次元削減法の開発・高度化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,3月初旬に,共同研究先のザルツブルグ大学においてザルツブルグ大学,スロバキア国立科学アカデミー,電気通信大学,理化学研究所の計5名の研究者による研究打ち合わせを予定しており,そこでブロックヤコビ法の理論的解析と高性能実装の両面からの研究を進める予定であった。しかし,コロナウイルスの影響により,高性能実装を担当するスロバキア国立科学アカデミー及び理化学研究所の研究者の参加が不可能となった。そのため,高性能実装の研究が予定より遅れている。一方,ザルツブルグ大学のVajtersic教授と研究代表者の山本との打合せは予定通り実施できたため,理論面での研究は予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ブロックヤコビ法に関する理論面での研究を予定通り進めるとともに,高性能実装の面での研究を,遠隔会議システムの利用などにより進める。また,行列計算を基盤とした機械学習法の研究についても,予定通り進める。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により,研究分担者の工藤が研究打ち合わせのためのザルツブルグ大学への出張を取り止めた。また,その研究打ち合わせの成果に基づき論文を投稿し,オープンアクセス化の費用を支出するはずであったが,これを延期した。今年度に行わなかった工藤の海外出張と論文のオープンアクセス化は,来年度に行う。
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Research Products
(12 results)