2020 Fiscal Year Research-status Report
高いスケーリング性能と高精度性を併せ持つ次世代固有値・特異値分解ライブラリの開発
Project/Area Number |
19KK0255
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山本 有作 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20362288)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 周平 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (50824421)
今倉 暁 筑波大学, システム情報系, 准教授 (60610045)
|
Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
|
Keywords | 固有値計算 / 並列計算 / ブロックヤコビ法 / 収束性解析 / 誤差解析 / 非負行列分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
並列計算に適した固有値・特異値分解の計算法であるブロックヤコビ法について,収束性・計算誤差などの理論的解析と,並列計算機上での高性能実装を進めている。令和2年度は,ザルツブルグ大学のMarian Vajtersic教授,スロバキア国立科学アカデミーのGabriel Oksa博士との共同研究により,固有値計算向けブロックヤコビ法における固有値・固有ベクトルの収束性について解析を行った。従来,ブロックヤコビ法においては,反復により行列の非対角成分の2乗和が0に収束することが示されていたが,これは必ずしも対角要素が固有値に収束することや,変換に用いた直交行列の積が固有ベクトル行列に収束することを意味しない。さらに,固有値が縮重する場合には,固有ベクトルが一意でないため,そもそも固有ベクトルへの収束を定義することが困難である。本研究では,前者の問題に対し,コーシー列を用いた解析法により,(i) 反復ごとに適切な並べ替えを行うならば,対角要素は固有値に収束すること,(ii) 変換行列の積において,単純固有値に対応する列は同じ固有値に属する固有ベクトルに収束すること,を証明した。さらに,(iii) 縮重固有値に対しては,変換行列の積自体は一般に収束しないが,そこから作られる射影演算子は縮重固有値に対応する固有空間への射影演算子に収束すること,を証明した。これらの結果は,線形代数分野のトップジャーナルであるLinear Algebra and Its Applications誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,6月に欧州で開催される国際会議Parallel Matrix Algorithms and Applications 2020にザルツブルグ大学,スロバキア国立科学アカデミー,電気通信大学,理化学研究所の計5名の共同研究者が参加し,並列固有値計算ソルバに関するオーガナイズドセッションを行うとともに,研究打合せを行う予定であった。しかし,コロナウイルスの影響により同会議が中止となり,海外出張も原則として禁止となったため,これらの活動を実施することはできなかった。そこで,研究打合せは遠隔会議システムとメールで行うことにし,理論面を中心に上記の研究を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
ブロックヤコビ法に関する理論面での研究を予定通り進めるとともに,高性能実装の面での研究を,遠隔会議システムの利用などにより進める。また,行列計算を基盤とした機械学習法の研究についても,予定通り進める。
|
Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で,参加を予定していた国際会議が中止となり,国際共同研究先への滞在も次年度に延期となったため。
|
Research Products
(12 results)