2021 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな鉱山汚染地域の廃棄物安定化に向けた毒性元素鉱物への微生物作用の解明
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19KK0270
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濱村 奈津子 九州大学, 理学研究院, 教授 (50554466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光延 聖 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70537951)
鹿島 裕之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 研究員 (70780914)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 重金属汚染 / 微生物金属代謝 / ヒ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鉱山開発による汚染が環境問題となっている各国の研究者との連携により、世界各地の鉱山汚染地域における鉱山廃棄物の安定性および毒性元素挙動に影響する微生物作用について明らかにすることを目的としている。これまでの毒性元素の生物変換では、主に溶解性の基質を利用する微生物が研究対象とされており、実際の汚染環境に多く存在する固体毒性元素の生物利用機構については、ほとんど明らかにされていない。そこで本年度は、鉱物態を基質として利用する新規微生物機構の解明を目的に、独自に開発した現場電気培養装置を鉱山汚染現場に設置し解析を行った。ヒ素等重金属汚染廃水に現場培養装置を設置後6ヶ月後に回収した結果、生物学的電気活性が検出されるとともに、16S rRNA遺伝子アンプリコン解析結果から、近縁種が未培養の新規電気細菌の優占的な集積が確認された。これらの実施結果に基づき、培養装置の設置条件や設置時の電位測定、回収時の測定や微生物解析用サンプル処理等のプロトコールを確立するとともに、培養装置の保護などの改良の検討も行った。当初予定では海外の鉱山汚染サイトへの同装置設置を計画しており、サンプル回収までの設置期間や装置軽量化などの課題について海外共同研究者らと協議を継続していく。また、鉱山汚染試料を接種源とした微生物電気化学培養系を立ち上げており、高濃度ヒ素およびアンチモン存在下での電流生成とともに金属代謝細菌の集積を確認している。電気化学培養系の構築に際しては、海外共同研究者らとのオンライン協議等により実施した。今後はこれら集積培養系からの金属代謝細菌の分離培養を進めるとともに、COVID-19の状況次第で海外調査の予定を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、鉱山汚染試料を用いた解析は、国内で取得したサンプルにおいて順調に進んでいる。当初予定していた海外調査は実施できていないが、手法はすでに確立し確認済みであるため、海外渡航が可能になり次第行う予定である。また、固体・不溶性の毒性元素代謝に関与する微生物機能の解明に関して計画していた微生物電気化学培養系については、当初予定していた海外共同研究者訪問がコロナ感染拡大の影響により延期となっているが、オンライン協議等により実験系を確立できており、問題なく予定通り進んでいる。これらの状況から、概ね当初の目的に沿って順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
鉱山廃棄物や汚染土壌を接種源とした微生物電気化学培養系で活性が確認されている系について、主要な構成微生物種の分離培養を継続する。また、高電気活性や集積が検出されている系については、メタゲノムおよびトランスクリプトーム解析を実施し、金属代謝に関与している微生物機構を明らかにする。電気化学培養系の微生物解析や鉱物学的同定については国際共同研究者らとオンラインで協議しながら進める。 当初の予定では国際共同研究者らとともに南米チリ北部鉱山地域で現地調査を計画していたが、これについては国際状況も考慮し共同研究者らと密に連絡を取りつつ、今年度内で可能な日程・範囲での実施や、渡航が不可能な場合は装置を送付し現地共同研究者に設置および回収を依頼するなど、可能な実施方法を引き続き検討する。
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Causes of Carryover |
当初は本年度中に海外調査等を実施する予定であったが、コロナ感染拡大の影響により渡航できなかったため次年度使用額が生じた。次年度は国際状況も考慮し共同研究者らと密に連絡を取りつつ、可能な日程・範囲での訪問を実施することとし、訪問ができない場合には、オンライン協議を継続するとともに、国際研究者への装置の送付および設置回収等を依頼して実施することも引き続き検討する。
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