2021 Fiscal Year Research-status Report
Strategy for spatially-controlled tissue regeneration
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19KK0278
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 功一 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50283875)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷本 幸太郎 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20322240)
平田 伊佐雄 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (40346507)
吉見 友希 広島大学, 病院(歯), 病院助教 (50707081)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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Keywords | 組織工学 / 空間制御 / 細胞成長因子 / キメラタンパク質 / 遺伝子組換え / 三次元造形 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織工学による損傷組織の再生治療に関して、空間特異的な生体組織構造を設計するための方法の確立を目指して研究を行ってきた。例えば、関節軟骨では、表層部から基底部にかけて細胞の分布、細胞外基質の組成や含有量が傾斜的に変化しており、そのような秩序構造が関節機能の鍵を握る。本研究では、このような部位特異的な組織構造の再構築にとって、細胞の分化を方向付ける複数種類のタンパク質性因子を空間特異的に配置した足場材料を用いることが有効であるとの仮説に基づき、遺伝子組換えによって足場材料結合性ドメインを融合したタンパク質性因子の合成とその機能評価に取り組んできた。 昨年度は、高分子材料に親和性をもつペプチドを融合した細胞成長因子等を種々作製し、各種高分子表面との相互作用について検討した。その結果、設計したペプチドが表面固定化のためのモチーフとして有効であることがわかった。しかしながら、その効果は融合パートナであるタンパク質の特性に大きく依存した。一方、当該ペプチドをBMP-2のC末端に融合したキメラタンパク質では、BMP-2の特徴的なC末端構造に起因して、ぺプチドと高分子表面との相互作用が十分には生起しなかった。そこで、本年度は、BMP-2のN末端に類似のペプチドを融合し、そのキメラタンパク質と平滑表面をもつモデル高分子表面との相互作用について調べる実験を開始した。 また、キメラタンパク質の機能評価として、ポリカプロラクトンを用いて足場材料モデルを作製し、高分子親和性ペプチドを融合したキメラタンパク質をポリカプロラクトンとの相互作用を利用して担持できるかその可能性を評価した。さらに、共同研究者のGroll博士の協力を得ながら、3D造形足場材料にキメラタンパク質を担持し、その複合化材料上でヒト骨髄由来間葉系幹細胞を培養して、増殖性や分化特性について調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究開始の当初、若手研究者の吉見がドイツに出向き、ドイツ側研究者と共同実験を行うことを計画していた。しかしながら、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大のため実現しなかった。これによって、当初計画していた共同実験のほとんどが実施できなかったことから、令和3年度は、当初の目標に向かって、新たな展開も模索しつつ、日本側で行える研究を遂行するに留まったのが主な原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は最終年度であるが、コロナ禍の影響で、先方に出向いて共同研究活動を行える見通しが立たない。そのような中、研究の総括に向けて、本邦で実施可能な研究を拡充するとともに、ドイツの研究者が保有する技術に類似した3D造形技術の導入を図る。 本研究の当初の目的は、組織再生過程を構造と機能の両面から制御し、天然組織に類似した関節軟骨移植片を創り出す方法の確立であった。これまでの研究結果をもとに、軟骨組織のみにターゲットを絞るのではなく、間葉系幹細胞の部位特異的分化制御の観点から、タンパク質性因子の担持法及び3D足場材料の構造因子と組織再生との関連について研究を進める。具体的には以下の通りである。 (1)コラーゲンコーティング表面への結合性を有する細胞成長因子を作製する。細胞成長因子には骨形成因子(BMP-2)、血管内皮成長因子(VEGF)、ストローマ細胞由来因子(SDF-1alpha)を取り上げ、コラーゲン結合ドメインとの融合タンパク質を大腸菌発現系を用いて作製し、特性解析及びコラーゲン結合性評価を行う。 (2)ドイツの共同研究者らの手法と類似の3D造形法を採用してポリ乳酸及びポリカプロラクトンからなる多孔質体を作製する。3Dプリンターは現有の装置を用いる。構成要素となる微細ストラットの形状制御について造形条件の最適化を行う。 (3)これまでの予備検討を踏まえ、足場材料にコラーゲンをコーティングし、その表面にキメラタンパク質を特異的相互作用を利用して担持する。キメラタンパク質の徐放特性を評価するとともに、間葉系幹細胞の挙動について調べる。これらの試験結果から足場材料の構造因子と細胞機能及び生成組織体の性質との相関に関する知見を集積し、再生組織構造の空間的制御法について議論する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大状況が改善されず、若手研究者のドイツ派遣が実現しなかったことが主な原因である。 次年度は、国内外での移動が容易になると予想されるため、様子をみながら、派遣及び学会等での成果発信に充てていきたい。
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Research Products
(6 results)