2019 Fiscal Year Research-status Report
大気・海洋の微粒子観測への実用化と国際共同広域観測のための基盤形成
Project/Area Number |
19KK0289
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茂木 信宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20507818)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 大気微粒子 / 海洋懸濁粒子 / エアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
米国におけるコロナウイルス流行のために渡航の見通しが立たない状況なので、現在まで、渡航後に行う予定であった装置開発を前倒しで進めてきた。基課題研究で開発した水中微粒子の測定装置(Moteki 2020 JQSRT)を大気微粒子・海洋微粒子の現場観測に実用できるようにするため、(1)測定粒径範囲の拡張と(2)測定時間分解能の向上の2つの改良に取り組んだ。測定粒径範囲の拡張を実現するために、検出対象の粒径範囲が異なる2つの光学系・フローセルを並列に搭載した装置を新たに開発した。本改良により、測定粒径範囲が従来の0.2-1.0マイクロメートルから、0.2-5.0マイクロメートルに拡張される見込みである。測定時間分解能を向上させ、水中だけでなく空気中の粒子の観測にも適するようにするため、従来装置において粒子検出速度の主な制限因子となっている多素子差動増幅型の光検出器の応答速度の改善するための開発を試みた。高速・低ノイズの差動増幅型光検出器の開発・改良を試み、現在までに信号波形の立ち上がり時間20ナノ秒, RMSノイズ1mV未満を達成した。従来装置では立ち上がり時間2マイクロ秒, 標準偏差ノイズ10mV程度だったので, 大幅な改善といえる。この高速・低ノイズな光検出器を用いた場合、従来装置よりも100倍程度時間分解能が向上し、検出下限粒径も拡張できる見込みである。これらの開発により、大気微粒子・海洋微微粒子の広域観測への実用化の可能性が現実的となった。これらの装置は、渡航後、現地での共同実験・現場観測に利用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
米国における新型コロナウイルス大流行のため、渡航先研究機関(NOAA, Earth System Research Laboratory, Boulder, CO)が閉鎖となっており、現在まで渡航することができない状況である。渡航可能時期の見通しも立っていない。ただし、渡航後に実施する予定の共同実験に用いる装置の開発はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、米国における新型コロナウイルス大流行がおおむね収束し、渡航先研究機関から出張許可が下り次第、渡航の準備を開始する。それまでは、上述の測定機器の改良の課題(1)粒径範囲の拡張、(2)時間分解能の向上に、国内にて引き続き取り組んでいく予定である。(1)の広粒径範囲型の装置の開発はおおむね完了しており、今後、標準粒子を用いた測定性能評価実験および、環境中の粒子試料を用いた実験を実施する予定である。特に、鉱物粒子・生物粒子の検出性能の実験的評価を行う。(2)の高速型の装置の開発は現在途中であり、試料液体を高速に流すためのフローセルの開発を行う。さらに、液体中だけでなく空気中の粒子の観測を可能にするため、安定した空気流をプローブ光に導入するためのジェット機構の開発を行う。さらに、高速な波形を取得・解析するソフトウェアの開発を行う。これらの開発装置を用いて、渡航後に実施する共同実験について、受け入れ先の研究者とさらなる議論を行う。
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