2023 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Studies on Rhetoric Strategies in Democratic Athens
Project/Area Number |
19KK0296
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 昇 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (50548667)
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Project Period (FY) |
2020 – 2023
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Keywords | レトリック / 古代ギリシア / 歴史 / 修辞 / 法廷 / 民会 / 歴史 / 西洋史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「民主政アテナイの演説文化:法廷における実践的修辞戦略に関する総合的研究」を基課題とし、その成果を海外の専門研究者とともに多角的に分析し、更なる発展を目指すものである。基課題では、法廷弁論の修辞技法に注目し、史学・法学・文学の知見を総合して如何なる技法が説得に用いられたのかを精緻に分析し、歴史的特性の解明に努めた。 本国際共同研究では、主に法廷弁論の修辞技法と他の弁論の修辞技法との比較研究を行った。ジャンルの差異を確認し、法廷弁論の特性を明確化すること、類似性・影響関係を分析して民主政アテナイの演説文化全体の特性を明らかにすることを目的として行なった。2022年度後期から2023年度前期にかけては、Royal Holloway, University of Londonを拠点として自身の研究を進めるとともに、主に海外の研究者と意見交換を重ねた。法廷弁論に用いられた演説戦略の多様性、民会演説との差異、その社会政治的背景について、特に「性格描写」という点に着目して分析し、その成果を国際共著論文集として発行する準備を進めた。また法廷や民会の演説が、裁判員や民会参加者、その他の観衆の反応を巧みに取り入れながら構成されていたことを明らかにし、この点について2023年3月にポーランド(カトヴィツェ、クラクフ)で口頭報告をした後、英語論文として整理した(このうち一つは、2024年度中にBrill社から出版される英文論集に収録される予定である)。また法廷・民会での演説の特性を考えるため、喜劇中に描写された演説についても検討が必要であると考え、古喜劇を中心に関係文献を収集し、先行研究・関連史料の分析を進めた。これにより喜劇でも法廷や民会演説に近い表現が、劇の設定に合わせ、巧みに用いられていたことを解明し、2023年にポルトガル(コインブラ)で開催される国際学会で発表した。
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