2020 Fiscal Year Research-status Report
A study of the books and woodblocks of collection of temples in northern Vietnam
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19KK0298
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宮嶋 純子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80612621)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | ベトナム仏教史 / 東アジア仏教史 / 典籍流通史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主として基課題「ベトナム北部地域における仏教典籍流通の史的研究(17K18251)」の調査過程において収集した、バクザン省ボーダー寺所蔵典籍資料の整理作業を行った。本寺の所蔵典籍群は、18世紀-20世紀初頭にかけてベトナム北部地域で刊行された仏教経典類及び少数の道教関係文献や字書等から構成され、既に巻子本の仏教典籍のほぼ全てに当たる63種、計291冊について書誌データの作成と刊記や芳名録の撮影を完了している。 ベトナムで刊行された仏教典籍のうち、これまで一般に知られてきたのは、近代に入りフランス極東学院による収集が行われ、後に漢喃研究院やベトナム社会科学院通信研究所図書館に移譲されたもの約400種であり、これらの資料については目録(『越南漢喃文献目録提要』)が公刊されている。また、近年はベトナム仏教界が、各地域の大寺院に所蔵される木版版木の調査を積極的に進めており、学術雑誌上で幾つかの目録が報告されている。これに加えて、桜井由躬雄氏の198年代の調査にかかる景福寺(タイ・バンコクのベトナム系寺院)旧蔵の典籍目録など、ベトナム刊行仏教典籍に関する目録・資料などを収集してその全体像の把握に努め、渡航後の現地調査を円滑に進めるための下準備を行っている。上述のバクザン省ボーダー寺所蔵典籍の中には、これらの既存目録類に該当書誌が見当たらないものも含まれており、今後も他の寺院所蔵典籍などから未知の資料が発見される可能性を示唆している。 上記の成果の一部は、既に論文「近世ベトナム北部地域における仏典刊行事業」(『東西学術研究所紀要』53輯)中に報告しているが、引き続き、ボーダー寺所蔵典籍資料の調査リストや他の機関所蔵の典籍資料との比較などについて詳細な報告を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、本格的な共同研究の実施に先立ち、ベトナムに渡航して事前調査及び受け入れ機関との調整を行う予定であったが、新型コロナウイルスの流行により渡航が不可能であったため、現地における詳細な調査計画が立てられていない。そのため「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策として、以下を重点的に進める。 1.可能な限り速やかに渡航し、現地における調査研究に着手する。調査の主目的は、ベトナム北部各地の寺院所蔵典籍・版木とし、併せて関連文献・資料の収集を行う。 2.渡航が可能になるまでは、引き続きこれまでの調査で収集した資料や、日本国内またはオンラインで閲覧が可能な資料を用いて、現存するベトナム刊行仏教典籍の全体像や刊行史の把握に努める。
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