2021 Fiscal Year Research-status Report
A study of the books and woodblocks of collection of temples in northern Vietnam
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19KK0298
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宮嶋 純子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80612621)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | ベトナム仏教史 / 東アジア仏教史 / 仏教典籍史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、当初計画ではベトナムに渡航し現地調査を行なう予定であったが大幅な延期を余儀なくされたため、2020年度に引き続き、基課題(「ベトナム北部地域における仏教典籍流通の史的研究(17K18251)」の調査過程において収集した、バクザン省ボーダー寺所蔵典籍資料の整理及び分析作業を中心に行った。 特に、東西学術研究所例会報告(12/17)においては、ボーダー寺所蔵典籍の中から明・シュ宏撰『往生集』のベトナム刊行版を取り上げ、近世ベトナムにおける仏典刊行事業を支えた寺院間のネットワークや、在家信者を中心とする地域社会との関係を考察した。 禅浄一致・教禅一致を唱えて活動して仏教界の立て直しを図り、現代中国仏教の基礎を作ったとされる中国明朝の高僧・雲棲シュ宏(1535-1615)の著作の多くはベトナムにも流伝し、中でも『往生集』三巻は北部ベトナムでは明命十三年(1832)及び嗣徳三十三年(1880)に刊行された。報告では、本書の序文や、巻末に附された「法供芳名録」(寄進者名簿)について詳細な分析を行い、刊行事業を主催した寺院(明命版は河内乾安寺、嗣徳版は南昌県宝龕寺)だけでなく、現在のハノイ市・バクニン省・ハイズオン省・ナムディン省など、紅河デルタ地域の広範囲にわたる多数の寺院に属する僧尼が『往生集』の刊行及び流通に携わっていた状況を考察した。また、僧尼と同様に、紅河デルタ地域の広範囲に分布する村落の住民が、主に親類縁者の追善供養を目的として、仏典刊行のための寄進を行っていたことを明らかにし、近世ベトナム北部地域社会において、出家者・在家者ともに、功徳・追善の手段としての刻経事業への参画が広く浸透していたことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、2021年3月よりベトナムに渡航する予定であったが、新型コロナウイルスの流行により大幅に延期し、2022年3月よりの渡航となった。予備調査や受け入れ機関との事前調整を十分に行うことができず、また現地における社会活動の制限もあり、渡航から本格的な調査活動に入るまで準備期間を要することから、「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年3月10日にベトナムに入国し、2023年3月まで、ベトナム社会科学院宗教研究院の客員研究員として現地での調査研究を遂行する。調査の主目的は、ベトナム北部各地の寺院が所蔵する典籍・版木資料の実見及び関連文献の収集であるが、近年ベトナムの学界でも近世の仏教典籍・版木資料に対する関心が高まっており、新型コロナウイルスの流行下においても寺院の調査や研究成果の刊行などが継続して行われていた模様である。まずは最新の研究状況について情報を収集し、現地研究者との意見交換を行った上で、改めて調査対象となる寺院の選定を進めたい。
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