2023 Fiscal Year Research-status Report
A study of the books and woodblocks of collection of temples in northern Vietnam
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19KK0298
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宮嶋 純子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80612621)
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Project Period (FY) |
2020 – 2024
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Keywords | ベトナム仏教史 / 仏典刊行史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、主として同年7月~12月にベトナム・ハノイに滞在し、ベトナム北部地域の仏教史料に関する文献収集及び寺廟調査を行った。これは、2021年3月~2022年3月にかけて実施したベトナム社会科学院宗教研究院における在外調査を補完・継続するためである。 このうち、2023年8月10日~16日には、ベトナム社会科学院文化研究院チュー・スアン・ザオ氏及びタンロン大学チャン・ヴァン・クェン氏と共同で、タイビン省ケオ寺とナムディン省ケオ寺、またその両寺院の周辺地域の寺廟調査を行い、所蔵碑文・神勅・典籍資料等を収集した。本調査における収集資料の概要とその特徴的に関しては、2023年12月22日に関西大学東西学術研究所研究例会にて、「ベトナム紅河デルタ地域の村落と寺院」として報告した。 また、2023年11月3日にハノイ国家大学で開催された国際シンポジウム「日越国交関係:過去・現在・未来」に参加し、ポスター発表「永厳寺清亨(1840~1936)の仏典刊行と日本近代大蔵経」を行った。これは、先にバクザン省ボーダー寺で収集した典籍資料等に基づき、明治期に日本で刊行された活字大蔵経が、当時ハノイに置かれていたフランス極東学院を通じてベトナムに輸入され、これら日本の大蔵経を底本として当時の学僧永厳寺清亨が新たな仏教典籍を刊行した経緯を紹介したものである。 2023年11月26日~28日には、日本国大使館専門調査員の新江利彦氏の同行を得て、タインホア省の寺廟調査を行った。タインホア省はマー川デルタに位置し、ハノイを中心とする紅河デルタとは異なる文化圏を持つ。今回の調査では、古い典籍資料等は確認できなかったが、郷土史や地域の仏教史に関する貴重な研究文献を入手しており、現在その内容を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで実施した現地調査により、幾つかの寺院で所蔵典籍及び碑文資料などを収集(主に写真撮影による)したが、これらの内容分析や比較検討に時間を要しており、成果報告の準備が滞っている。そのため、(3)やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に引き続き、ベトナム北部における寺院の実地調査を通じて、近世期ベトナムで刊行された仏教典籍や経典版木の所蔵状況に関する情報の収集を行うと共に、これまでの調査で収集した資料の整理と成果報告に注力し、18世紀~20世紀にかけてベトナム北部各地の寺院において行われた仏教典籍刊行事業の実態や、刊行後の流通状況の解明につとめる。 また、ベトナム南部ビンディン省タップタップ寺に中国明代に南方で刊行された万暦版大蔵経が所蔵されていることが2023年に明らかにされており、可能であれば実見して中国とベトナム諸地域における典籍の輸入を通じた仏教文化の交流について検討する材料の一つとしたい。
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