2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19KK0331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 綾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20537138)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | シグナリング / 情報の非対称性 / 質への投資 / エビ養殖 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
途上国では、農家と買取人の間に存在する情報の非対称性のため、同じ市場に農産物の質が混在していることがある。本研究は、農家に農産物の質を買取人に伝達する手段(シグナリング)を提供することで、この問題が解決されるかを検討するため、エビ養殖産業を事例に社会実験を行う。具体的には、どのような農家がシグナリングに参加するか、また質への投資行動や販売行動においてどのような変化がみられるかを考察することを目的としている。2021年度には、以下を行った。 ・2019年に収集した家計データを使用し、エビ養殖の病気発生の決定要因に関する論文を執筆した。特に、水路を介して周辺農家の養殖地から病原菌や汚染水が物理的にスピルオーバーする可能性と、周辺農家が採用している養殖方法に影響を受け、同じような養殖方法を採用していることで病気が発生する確率も近くなるというピア効果の両方を考慮した分析を行った。本論文は開発経済学会の大会で口頭発表を行った。2020年度にアジア開発銀行の報告書の一部として執筆した論文をアジア開発銀行主催の会議やアジア農業経済学会で発表した。更に、養殖のグッドプラクティスを促す手法を検討するための社会実験を行った研究を国際農業経済学会で発表した。 ・新型コロナ感染症のために一時停止していたベトナムでの第二回家計調査を再開し、2021年度末までに完了させた。 ・インドネシアのエビ養殖産業に関する調査を実施した。また、インドネシアのエビ養殖農家を対象に養殖方法を支援するアプリを開発し、農家に提供している企業から話を聞き、今後予定していたシグナリングの社会実験等においての協力を検討した。 ・2019年、2022年の二次点のベトナム調査地の衛星画像データを購入し、GIS専門家と共同で、養殖地の時系列的推移を考察する研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症拡大のため、基課題で行っている家計調査と水質計配布の社会実験の実施が遅れた。2020年に行う予定だった家計調査自体は2021年に完了できたが、水質計配布の実験は養殖農家との接触を伴うことから現地政府に再開の許可を得られておらず、再開のめどがまだ立っていない。本研究費で実施予定であるシグナリングのプラットフォームを農家に提供する実験は、水質計の実験が終わってから実施予定であるため、こちらも現在実施できずにいる。一方で、衛星画像や空間計量経済学、GIS情報を利用した新たな研究方法を試みながら、コロナ禍でもできる範囲で研究を進めようと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、水質計実験の再開が可能かどうかを現地の共同研究者や政府担当者と相談して決定したい。その後、シグナリングプラットフォームの介入を具体化するため、企業との協力に関する協議を進めたい。 また、2021年度に収集したデータを以前のデータと併せて分析し、この間に起こった変化等を分析する。さらに、衛星画像を用いて養殖産業の経年変化を考察する研究を進めていきたい。
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Research Products
(6 results)