2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19KK0339
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
豊田 真穂 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20434821)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | 優生学 / 人口政策 / 純血 / 戦後日本 / アメリカ占領 / 優生保護法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、3月に研究を開始させ、共同研究のメンバーを確定させた。 研究計画時には想定していなかったコロナ禍などの事情によって、共同研究メンバーの変更があったが、研究目的・内容に変更は生じない。 研究メンバーは、研究テーマ/トピックごとに3つに分けられる。第一は、優生学/人口政策のグローバル史と戦後日本についてである。立命館大学の松原洋子は国民優生法から優生保護法への連続性/非連続性を明確にする全体像を提示し、アメリカのコロンビア大学のMatthew Connellyはアメリカのグローバルな人口政策において戦後日本の優生保護法を位置づけ、早稲田大学の寺尾範野はイギリスの断種法制定運動と産児制限等のフェミニズム運動との接近について検討する。第二は、アメリカの「純血」政策と日本の優生政策との関連を探る。トルコのコチ大学のAiko Takeuchi-Demirciは、1930年代の日米における「混血児」に関する議論をフォローし、アメリカのコロンビア大学のSarah Kovnerは占領下でアメリカ兵士との間にうまれた GI Babyの存在を優生保護法の関係から分析し、東京大学(院)の有賀ゆうアニースがはそうした「混血児」の戦後の生活史を検討する。そして第三に、アメリカと優生政策に関しては、富山大学の小野直子がアメリカ国内の断種法支持に関する1930年代の変化を追い、研究代表者の豊田真穂がアメリカ占領軍の見解が日本本土と沖縄で異なる結果をもたらしたことを分析し、日本学術振興会の紀愛子が優生学を継承した戦後ドイツの遺伝学とアメリカ資本の関係を分析する。 共同研究メンバーとは、コロナ禍のためオンラインで研究打合せを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まずは国際共同研究のメンバーを確定することを狙いとした。来年度以降の本格的な共同研究にむけて一歩前進したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず2021年度には、生殖コントロールに関する政策における占領軍スタッフがそれぞれの立場によって反対から容認まで、幅広い見解を示していることを研究代表者(豊田)が示し、その思想的背景をアメリカの優生学運動史を研究するアメリカのミシガン大学のAlexandra Minna Sternが検討を加えるワークショップを開催予定である。さらに、寺尾範野、Aiko Takeuchi-Demirci、有賀ゆうアニース、紀愛子、小野直子によるそれぞれの研究報告とその後のディスカッションを行うシリーズ「戦後優生政策の比較」の連続公開講座を企画している。 2022年度には、全体ワークショップをひとまず日本語で開催し、共同研究のメンバーそれぞれの研究内容を把握し、オーバーラップや類似性、比較の観点などの検討を行う。その後、研究代表者は、2022年度秋からコロンビア大学に滞在し、Sarah Kovner およびMatthew Connellyと共同研究に関する打合せを行う。同滞在中には、アメリカの純血政策が「ヒトラーのモデル」となったことを明らかにしたイェール大学のJames Q. Whitmanとのワークショップや、近郊にあるロックフェラー文書センター、ハーヴァード大学、プリンストン大学、メリーランド大学、国立公文書館NARAなどにおいて史料調査を行う。さらに遠方となるが、スタンフォード大学フーヴァー研究所所蔵の資料を調査する。 以上をまとめた研究成果は、2023年夏、Takeuchi-Demirci、Stern、Connnelly、Kovnerらを東京に招へいし、早稲田大学で開催予定の国際シンポジウムにおいて報告し、2024年度中に出版する計画である。
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