2021 Fiscal Year Research-status Report
LC特異点に対する複素解析理論の構築および拡張問題に基づく正曲率多様体の研究
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19KK0342
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松村 慎一 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90647041)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | Calabi-Yau多様体 / 強ネフ因子 / Serrano予想 / 非消滅予想 / ハイパーケーラー多様体 / Bedford-Taylor積 / Siu分解 / 極小モデル理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は, Haidong Liu(北京大学)とともに, Calabi-Yau型の多様体上の強ネフ因子(strictly nef divisors)を研究した. この研究の動機は強ネフ因子に対するSerrano予想, 豊富性予想(ampleness conjecture), 一般化された非消滅予想に基づいている. 結果として, 不正則数が零となる4次元のCalabi-Yau型の多様体に対して, Serrano予想および豊富性予想を解決した. 特に, 4次元のハイパーケーラー多様体(正則シンプレクティック多様体)に対して, 上記の予想を解決した. その証明は2つの段階に分けられる. 1つ目の段階では, Serrano予想をLC対に対して一般化した形で定式化し, 非消滅予想の仮定の下で極小モデル理論を利用しながら豊富性を証明した. この段階は代数幾何的な部分である. 2つ目の段階では, カレント(測度係数の微分形式)のBedford-Taylor積および高次カレントのSiu分解を用いて, 強ネフ因子に対して正則切断を構成し非消滅予想を証明した. この段階は複素解析的な部分であり, Lazic-Peternellの非消滅予想に対する先行研究が重要な役割を果たす. また, Juanyong Wang(中国科学院)とともに, ネフ反標準因子を持つKLT対の構造定理を研究した. 反標準因子のネフ性は多様体のある種の正曲率性である. その過程でこの構造定理や基本群の視点からLC特異点の困難さが明らかになってきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LC特異点に対する大目標には大きな進展は得られなかった. しかし, いくつかの特別な場合に, LC特異点の困難さを明らかにすることができた. これが大目標につながるかは分からないが, この方向で研究を継続していく. また, 4次元のCalabi-Yau型の多様体上の強ネフ因子という非常に限定的な状況ではあるが, アバンダンス予想に関する予想を確認できた. この点は4次元以上のアバンダンス予想に部分的成果すら少ない点を考慮すれば価値があると思われる. 以上の理由から全体としてはおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルスの感染拡大の影響で予定していた国際研究集会の開催や国外での研究討論を行えなかった. しかし, バイロイト大学(ドイツ)で研究を開始する準備は整った. 今後は国外の研究者と積極的に議論しながら研究を推し進めていく. また, 論文の執筆が進んでいないいくつかの成果を論文としてまとめ学術誌に発表する.
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Research Products
(15 results)