2022 Fiscal Year Research-status Report
LC特異点に対する複素解析理論の構築および拡張問題に基づく正曲率多様体の研究
Project/Area Number |
19KK0342
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松村 慎一 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90647041)
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Project Period (FY) |
2020 – 2023
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Keywords | ネフ余接ベクトル束 / 第二チェーン類 / アバンダンス予想 / 単純正規交差因子 / 混合Hodge理論 / ファイバーの変動 / 数値的小平次元 / 数値的同値類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 代数幾何(特に双有理幾何)における超越的な手法(複素解析/微分幾何の手法)を発展させ, 正則切断の拡張問題や正曲率の多様体への応用を与える. 2022年度は, 非負曲率多様体の構造定理を応用し, 一般化された極小モデル理論(the generalized Minimal Model Program)のカテゴリーでの非消滅予想を研究した. その成果として, ネフ反標準束を持つ3次元の多様体に対しての非消滅予想を解決できた. 反標準束に対してアバンダンス予想は成立しないが消滅予想のみは期待できる点は, 興味深く背後に幾何学的な現象があることが期待される. これはT. Peternell (Bayreuth大学) V. Lazic, N. Tsakanikas, Z. Xie (Saarland大学)との共同研究である. また, ネフ余接ベクトル束を持つ射影多様体のアバンダス予想も研究した. その成果として, 第二チェーン類が消える極小な射影多様体に対してアバンダンス予想を解決し, Iitaka射のファイバーの変動を微分幾何的な正値性の条件で記述した. これはM. Iwai(大阪大)との共同研究である. さらに, LC特異点を持つ多様体に対する単射性定理(消滅定理の一般化)も研究した. 成果として藤野予想を解決した(この予想自体はCao-Paunにより2022年に解決済み). 代数幾何的な状況における単射性定理は混合Hodge理論で証明されていたが, 我々の証明は単純正規交差因子上での調和積分論の研究に基づいており, 両手法の対応関係の研究が可能になって点も成果である. これはM. Chan, Y. Choi(Pusan National University)との共同研究である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の大目標のひとつであるLC特異点を持つ多様体の単射性定理に関する藤野予想を解決できた. アバンダンス予想に関連する拡張問題については部分的な成果しか得られていないが, そもそも極めて難しい問題なので, ネフ余接ベクトル束を持つ場合にその難しさを明らかにできた点だけでも十分な成果と言える. ネフ反標準束の非消滅予想を適切な意味で正曲率を持つ多様体に帰着できたのは当初の計画を超えた成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
ネフ反標準束に対する線形同値類に対する''honest''な非消滅定理を研究する. そのために本研究で得られた視点を活かし正曲率の多様体の自己同型群を調べる. また, 拡張問題との関係についても考察する. LC特異点を持つ多様体に対する単射性定理を正則凸領域(Stein多様体への固有射を持つ多様体)に一般化する. また. 単純正規交差因子上での調和積分論の応用を模索する.
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Research Products
(10 results)