2019 Fiscal Year Research-status Report
ナノ構造スキャフォールドとラマン計測による幹細胞のメカノトランスダクション解明
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19KK0357
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藪 浩 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (40396255)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | メカノトランスダクション / スキャフォールド / ハニカム / 自己組織化 / ナノラセン |
Outline of Annual Research Achievements |
培養基材の弾性率やナノ~ミクロンスケールの表面構造が幹細胞の接着・増殖・分化に与える影響とその機序を分子レベルで解明することは再生医療・組織工学の分野において非常に重要な課題である。近年、メカノバイオロジー研究の発展により、足場素材の物理的・構造的特性によっても培養細胞の機能性が飛躍的に変化することが知られつつある。培養基材の弾性率やナノスケールから細胞スケール(ミクロンスケール)における表面構造が幹細胞の接着・増殖・分化などの挙動に大きな影響を与えていることが報告されており、細胞内での分子レベルでの作用機序の解明が急務となっている。しかしながら弾性率が数MPa~数GPaでセルラー(細胞と同等)サイズ~サブセルラーサイズにおける研究はこの研究領域のミッシングリンクとなっている。生体に近い培養環境を与えられるような培養基材で、精度高い均質性を持ちながら大量調整能を持った素材はこれまで存在しておらず、新しいスキャフォールドが求められてきていた。基課題では、ミクロンサイズの孔径を持つハニカム状多孔質膜により幹細胞の接着・増殖・分化を制御し、独自に開発した近赤外励起ラマン散乱増強微粒子に基づき、細胞内分子を非破壊・非染色で観察可能であることを明らかとした。本国際共同研究では、Bordeaux UniversityのOdaらが持つラセン状シリカナノ構造体上での細胞培養技術を基研究に取り入れることで、微粒子の特定の表面に抗体を化学修飾した近赤外励起磁性SERS粒子を用いて、ラセン状シリカナノ構造体上で培養した幹細胞の分子動態をIn Situ解析することを目的とする。基研究でのミクロンスケール構造上の知見と、本国際共同研究のナノスケール微細構造上の知見を合わせることで、幹細胞分化に影響を与える作用機序を統合的に解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始時点では2020年6月から渡航先であるBordeaux大学への渡航を予定していたが、新型コロナウィルスの世界的な蔓延により、フランスの入国制限のため、日本からフランスへの渡航が困難な状況となった。そのため渡航計画の見直しと、国内における準備検討を進める方向に方針を転換する必要に迫られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年5月末時点でフランスの入国制限、外務省から渡航中止勧告が出ている状態であり、渡航スケジュールを後ろ倒しせざるを得ない状況である。そのため、新型コロナウィルスの感染が落ち着くと予想される2020年度後半から2021年度前半に渡航を開始する予定に変更し、そのスケジュールを基に受け入れ先であるBordeaux大とスケジュール調整を進める。 一方で国内においてナノスキャフォールドの予備的作製や、比較となる多孔膜の作製などの予備検討を進める。具体的には、特に最近見出した無機酸化物コートされたハニカムスキャフォールドの作製技術について、作製条件と多孔質の孔径や無機酸化物の厚みの関係などを明らかとし、表面の材料が同様の無機酸化物から成る多孔膜リファレンスとして準備を行う。また、それらの組成の解析をX線光電子分光(XPS)やフーリエ変換赤外分光(FT-IR)、X線回折(XRD)などの手法により行い、作製条件と組成の関係を明らかとする。 さらに、無機酸化物表面ではシランカップリング剤などによる化学修飾が可能であるため、様々な官能基を導入した無機酸化物多孔体スキャフォールドや、細胞接着分子であるRGD配列などを多孔体スキャフォールドに固定化することで、細胞の接着を制御可能とする試みなどを通じて、ナノスキャフォールドに対するリファレンスとして機能性が十分評価可能なハニカム多孔質スキャフォールドの作製を行う。
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