2021 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッドナノフォトニクスによる印刷マイクロレーザーと量子光集積回路の統合研究
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19KK0379
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉岡 宏晃 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20706882)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | 微小光共振器 / レーザー / インクジェット / 光集積回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、基課題研究にて代表者独自のインクジェット印刷法が成熟するまさに今、量子エミッターの駆動が可能なマイクロディスクレーザーを量子光集積回路に統合することを研究目的とする。当該年度は、インクジェット印刷法によるクラッド層の作製技術の開発、結合導波路チップの設計を国内で、ナノファブリケーションによる結合導波路チップの初期試作を海外で実施した。 インクジェット印刷法によるクラッド層の作製技術の開発では、当初PECVD法およびCMP法によるSiO2クラッド層(結合導波路とマイクロディスク間)の構築を海外にて計画していたが、昨今の渡航制限とこれまでの良好な精密印刷の知見を鑑みて、インクジェット印刷法で直接作製する手法に切り替えた。クラッド層の材料には、SiO2と同等の屈折率を有するフッ素系高分岐ポリマー(n = 1.45)を用いた。矩形の結合導波路に対して良好にオーバーコートするために、基板の濡れ、クラッド層の厚さ、形状など結合に必要な構造の最適化を行った。結果として、インクジェットスポット特有のコーヒーリング形状を有効に活用した良好なクラッド層を得ることができた。 結合導波路チップの設計では、海外での試作チップ作製に先立ち、マイクロディスクの結合に要求される素子のデザインをプログラムベースのツールを用いて実施した。結合導波路の両端には光の入出力のためにグレーティングカプラを設けた。 ナノファブリケーションによる結合導波路チップの初期試作では、昨今の各種制限の影響で短期間となったが実際に海外の共同研究先に滞在し行った。まず、すでに渡航前に用意していたチップデザインについて、海外共同研究者と作製技術の側面から改めてレビューを行いアップデートした。その後、電子ビーム描画装置、反応性エッチング装置などを用いてチップの試作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、インクジェット印刷法によるクラッド層の作製技術の開発、結合導波路チップの設計を国内で、ナノファブリケーションによる結合導波路チップの初期試作を海外で実施した。国内での作業は順調な進捗となったが、海外での作業は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で十分に渡航できていない。それぞれの作業について、まず、インクジェット印刷法によるクラッド層の作製技術の開発では、海外での作業を十分にできない点を鑑みて、これまでの良好な印刷最適化の結果をクラッド層の作製に拡張して、代替手段の確保を行った。単一の素子に対して処理を施せるため、本研究の軸である積層・三次元を志向した次世代量子光集積回路への貢献というビジョンに対して、結果として優れた技術を提案できた。一方で、結合導波路チップの初期試作については、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、十分な渡航期間の確保ができていない。当該年度に関しては2週間の渡航機会を確保できたが、短期間であるため、まず国内でできる限りチップデザインの設計作業を行って、渡航後にチップサンプルの試作を実際に行った。しかし、評価用として国内に持ち帰り短期的に利用するには十分なサンプルの性能・数量であるが、マイクロディスクの実装を見据えた実験では数量としても性能的にも十分ではない。つまり、チップ試作の最適化・量産化を遂行するに十分な時間の滞在ができていない。 以上より、国内では海外での作業をフォローする発展的な知見の蓄積ができたが、海外での作業が十分に行えていないため、やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の流れは、国内・国外での実験を効率的に織り交ぜて、①「精密配置ための印刷最適化、顕微分光セットアップの高性能化、モードカスケード計算解析」、②「ナノファブリケーションによる埋め込み型結合導波路作製」、③「モードカスケードの実験解析とマイクロディスクレーザーのチップ統合」の実施である。今後は、コロナ禍で十分に実施できなかった②、③における海外での結合導波路チップの作製を経て、マイクロディスクレーザーの統合を進めていく。 ②では、まず、新たな知見であるインクジェット印刷法によるクラッド層とマイクロディスクの統合に向けた、結合導波路の幅、長さなど形状の最適化を行う。チップ材質には、すでに量子光集積回路で標準的なSi3N4を用い導波路(n = 2.00)の試作を進めているが、結合状況が優れない場合は、屈折率の低いPMMA(n = 1.49)などへの変更も検討する。 ③では、まず、すでに試作した結合導波路チップ上へのインクジェット印刷法によるクラッド層およびマイクロディスクの一気通貫実装を国内にて実施する。また、Si3N4導波路との屈折率マッチングを考慮して、チタニアナノ粒子(n = 2.5)と高分岐ポリマーの分散インクによる高屈折の無機有機ハイブリッドマイクロディスクの開発を行う。チタニア粒子の凝集体であるため空隙を有し、Si3N4導波路と同等の屈折率まで低下することが見込まれる。減少幅が大きく導波路と等価の高屈折率が難しい場合は、PMMA導波路に切り替えて、それに対応した屈折率を有するフッ素系高分岐ポリマー(n = 1.45)とトリアジン系高分岐ポリマー(n = 1.78など)のブレンドにより等価屈折率をねらう。最後に、色素を添加したマイクロディスクの統合を行い、そのWGMレーザー発振の導波路への結合を評価する。
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