2021 Fiscal Year Research-status Report
異所性EPO遺伝子発現を誘導する新規貧血改善薬の候補化合物の作用機序の解明
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19KK0398
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平野 育生 東北大学, 医学系研究科, 講師 (00708117)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | GATA1 / Erythropoietin / erythropoiesis |
Outline of Annual Research Achievements |
赤血球産生は、エリスロポエチン(EPO)シグナルや、転写因子GATA1により制御されている。EPO遺伝子は、低酸素応答性転写因子HIFによる低酸素刺激特異的な正の制御と、GATA転写因子による負の制御を受けている。GATA因子による制御機構は、EPO遺伝子プロモーター領域に存在するGATA結合配列を介したものであることが報告されており、また同抑制性制御機構が個体内では異所性EPO産生の抑制に重要であることが示されている。申請者は基課題においてEPO遺伝子発現誘導が可能なGATA阻害薬の探索を行い、化合物を複数同定した。本国際共同研究は、GATA因子による赤血球分化制御機構の解析、およびそれに対するGATA阻害薬の影響を解析し、造血促進薬としてGATA阻害薬が利用可能か否か検証することが目的となっている。昨年度と同様に今年度もCOVID-19のパンデミックの影響により、海外共同研究者であるJames Douglas Engel教授のもとで研究を進めることは叶わなかった。その一方で、Engel教授とオンライン形式で話し合いを重ねることで、今後の研究計画を練ることができた。新たな解析として、内在性Epo遺伝子プロモーター領域のGATAモチーフを破壊したマウス(TTTA-Epo)を複数樹立した。TTTA-Epoマウスは、GATA因子による抑制性制御が破綻することで、過剰に発現したEPOにより多血になることが予想されたが、むしろ同腹仔コントロールと比較して赤血球数が低下しており、腎臓Epo遺伝子発現も低下していた。この結果は、Epo遺伝子プロモーター領域のGATAモチーフがEpo遺伝子発現を正に制御していることを示唆するとともに、同定したEPO遺伝子発現誘導可能なGATA阻害薬が、同モチーフを介さない未知の機構を介してEpo遺伝子発現に影響していることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定ではGATA1による赤血球分化過程の制御機構の解析を行なう予定であったが、他の研究課題でも同様の解析を行なう機会があったため省略可能と判断し、当課題においてより本質的なGATA因子によるEPO遺伝子制御機構の解析として、TTTAマウスの樹立に進むことができた。今年度に渡米できなかったことは予想外であったが、結果的にマウスの樹立解析に十分な時間を確保できたため、研究の進捗状況としては計画よりも進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
解析したTTTA-Epoマウスはまだ1系統のみである。樹立した他のTTTA-Epo系統においても同様の結果となるか解析を行なう。また、先行研究で実施したマウスへの投与実験においてEpo遺伝子発現の誘導活性を示した化合物について、TTTA-Epoマウスへの投与実験をおこない、同効果がEpo遺伝子プロモーターGATAモチーフを介したものであるか解析する。 GATA因子の専門家であるEngel教授とは引き続き研究方針について密に相談し、渡米が可能になった段階で渡米し、GATA阻害薬によるEpo遺伝子誘導の機序の解明に取り組む。
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