2021 Fiscal Year Research-status Report
黄色ブドウ球菌のトキシン・アンチトキシンを利用した新規抗菌薬の開発
Project/Area Number |
19KK0409
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 文紀 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (70452589)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / トキシン・アンチトキシン システム / DNAジャイレース / DNAトポロジー / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
黄色ブドウ球菌はヒトの常在菌であるが、薬剤耐性菌の蔓延は全世界的な公衆衛生上の問題となっており、既存の抗菌薬の作用機序とは異なった新たな感染症治療薬・治療法の開発が必要となっている。 ほぼ全ての細菌はトキシン・アンチトキシン(TA)システムを保有している。TAシステムにおいて、トキシンタンパク質は細菌自身の細胞機能に必須なDNA、RNA、タンパク質合成等を阻害し、細胞分裂の停止および細胞死を誘導し、アンチトキシンはその毒性を中和する。我々は黄色ブドウ球菌のTAシステムの一つであるTsbA/TsbT TAシステムを見出し、さらにTsbTトキシンがDNAトポイソメラーゼの一種であるDNAジャイレースに作用し、細胞死を誘導することを明らかにしている。本研究では黄色ブドウ球菌TsbA/TsbT TAシステムの作用機序・機能の解明により、TAシステムを利用した黄色ブドウ球菌の感染症治療薬の開発を目的とした。 当該年度は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の世界的な蔓延により、当初計画から延期していた海外研究機関(米国)の研究滞在を8月から開始し、以下の共同研究を進めた。 1)アンチトキシンによるトキシン活性の制御機構の解明のため、トキシンタンパク質とアンチトキシンタンパク質の相互作用解析、2)DNAジャイレースの機能を制御するトキシン・アンチトキシンシステムによる生理学的な役割の解明に向けて、遺伝子欠損株を用いた表現系解析およびRNA seq解析による遺伝子発現の比較を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスSARS-CoV-2の世界的な感染拡大により、1年間延期していた海外研究機関(米国)において行う共同研究を当該年度8月より開始した。トキシンタンパク質とアンチトキシンタンパク質の相互作用解析を行ったが、期待する直接的な結合を検出することができなかった。そのためin vitroにおける両タンパク質の相互作用を前提とした低分子の探索を行うためには、当初の計画を再考する必要がある。 黄色ブドウ球菌のTsbAT遺伝子欠損株を用いて、病原性因子産生、バイオフィルム形成、薬剤感受性などの表現型解析およびRNA seq法による遺伝子転写量の比較発現解析を行ったが、現在までのところ顕著な表現型の変化、および遺伝子発現へのTsbAT TAシステムによる影響を検出できていない。問題解決のため、当初の計画に加えて黄色ブドウ球菌細胞内でTsbTトキシンが発現、機能する生理的な条件を探索する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
黄色ブドウ球菌TsbAT TAシステムの生理的な役割の解明およびTsbTを利用した新規治療薬の開発に向けて、当初の計画に加えて黄色ブドウ球菌を様々な環境下で培養した際のTsbAT遺伝子の発現パターンをRT-PCR法による解析し、TsbTトキシンが発現、機能する生理的な条件を利用し解析する。当初の計画に加えて、蛍光タンパク質遺伝子を用いたレポーターアッセイにより、TsbTトキシン遺伝子を人為的に活性化させる低分子化合物を探索するための実験系の開発を行う。 1年間延期していた共同研究先(米国)での研究滞在を開始できたが、当初の計画から遅れているため、共同研究先での研究滞在(米国)期間を延長し、共同研究を進めることを予定している。さらに、帰国後は抗菌薬作用時のTAシステム遺伝子の発現パターン解析、 RNA-Seq法による抗菌薬作用時の網羅的遺伝子発現比較解析により、TsbAT TAシステムの遺伝子発現への関与および生理的な役割を明らかにする。
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Research Products
(3 results)