2021 Fiscal Year Research-status Report
Area-specific contribution to locomotor control in premotor cortex
Project/Area Number |
19KK0414
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中島 敏 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (00455792)
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Project Period (FY) |
2020 – 2022
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Keywords | 高次運動野 / 歩行 / 薬剤注入 / 可逆的不活性化 / トレッドミル / ネコ |
Outline of Annual Research Achievements |
脳疾患によって歩行・姿勢調節という基本的な運動機能に障害をもつ患者さんが増える中,脳の各領域が歩行と姿勢調節に果たす役割を正しく知り,障害された領域に基づいたリハビリテーション法を開発することが急務となっています.特に転倒リスクが高い凹凸のある床面を歩行する時には大脳の後頭頂皮質・高次運動野と呼ばれる部位による,視覚入力に基づいた歩行の制御が重要と考えられます.これらの脳領域の機能を詳しく知るためには動物実験が必須であり,動物の中でもネコは歩行制御の研究に最適なモデル動物とされてきました. 申請者らの最近の研究によって,ネコの高次運動野の中の種々の領域が歩行を随意的に制御するにあたって特徴的な関与をしていることが示唆されました.これを受け本研究では,ネコが障害物付きのトレッドミル上を歩くよう訓練した上で(1)ネコが歩行中に高次運動野の個々の神経細胞の活動を記録し, (2)高次運動野の中のごく狭い範囲を薬剤で一時的に不活性化した時の歩行障害を特徴づける,という手法で高次運動野による歩行の制御機構を明らかにしようとしています. 2021年度は手法(1)により4δ野と呼ばれる部位(ネコの大脳前方の十字溝とよばれる溝の壁をなす)に存在する多くの細胞がネコが障害物を前脚で跨いでから後脚で跨ぎはじめるまでの間に特異的に活動することを世界で初めて見出し,その事実は解剖学的データと共に査読付きの国際的神経科学雑誌に掲載されました.また,手法(2)により不活性化部位に特徴的な歩行障害のデータを蓄積中です. 本研究の成果は高次運動野が運動をコントロールする仕組みの理解を更に発展させることが期待されます.また,歩行障害の病態生理学的な機序についての理解を深め,脳の中の障害領域に応じた歩行リハビリテーション法を開発する基礎的な知見となることも期待されます.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネコ大脳の高次運動野のうち4δ野の細胞活動を特徴づけ,これを記した査読付き論文が国際雑誌に掲載された.また,1個体での薬剤注入実験がほぼ終わり,現在2個体目を用いて実験を継続している.
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Strategy for Future Research Activity |
ネコの高次運動野のうち未だ機能が明らかになっていない6aα野の細胞活動を記録・解析する. 高次運動野の中の異なる部位を不活性化した時の歩行障害を特徴づけるため,不活性化前後での歩行の変化を撮影した動画の定量的解析をDeepLabCut(深層学習を用いた動作解析ツール)で行う.また,動画と同時に記録した筋電図の活動の解析を行う.
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