2023 Fiscal Year Research-status Report
祭りの伝承における共同体〈心体知〉の体現から生まれる共在感覚の解明
Project/Area Number |
19KT0003
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
榎本 美香 東京工科大学, メディア学部, 准教授 (10454141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
傳 康晴 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (70291458)
寺岡 丈博 拓殖大学, 工学部, 准教授 (30617329)
高梨 克也 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (30423049)
阿部 廣二 東京都立大学, 大学教育センター, 特任助教 (60817188)
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Project Period (FY) |
2019-07-17 – 2025-03-31
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Keywords | 共同体〈心体知〉 / 無形文化伝承 / 身体的相互作用 / 共在感覚 / 口承文化の科学 / 集合的心性 / 協同身体技法 / 共有知識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、祭りを伝承する者たちが共同体〈心体知〉を体現する中で、成員相互に生まれる共在感覚のあり方を解明してきた。〈心〉とは、使命感や志、先達への敬意や後継者への情愛といった集合的心性である。〈体〉とは、物の操作において適切に他者との力配分や力の掛け方が調整できる協同身体技法である。〈知〉とは、木材や縄結びの呼称といった共有知識核である。〈体〉は実演と口頭での教示されるが,それが後継者の身体運動に紐づき〈体〉となる。そして、〈体〉を得る中で、どこまで手をかけるかといった〈心〉や結び目や木材の呼称といった〈知〉も伝えられる。共同体〈心体知〉の習得を通じて,自他の境界を超えた共在感覚が芽生えることを示すことを目的としている。 1. 祭りの支度場面データの収録・整備(全員)(R1-R5年度) :長野県野沢温泉村で行われる祭りの担い手である「三夜講」(数え42歳に連なる3年代)の祭りの支度場面を複数台で映像収録してきた。しかし、R2,3,4年度はコロナ禍の影響で、祭りが中止されたり、大幅な規模の縮小や制度の変更が見られたため、当初計画した通りの撮影はできなかった。 2. 共同体〈心体知〉の体現過程の分析(R1-R5年度) : a. 同時的協同の分析(高梨・阿部):世話人と見習いの同じ役職の者同士が同じ場で協同活動を行うことを通じて、祭りの共同体〈心体知〉を伝える方法を微視的マルチモーダル分析の手法で分析してきた。 b. 経時的変化の分析(榎本・伝・寺岡):見習いから世話人・後見人という経時的な変化を経る中で、同じ個人が共同体〈心体知〉を体得する過程を微視的マルチモーダル分析の手法で分析してきた。 c. 研究摺合せ(全員):同時的協同と経時的変化の分析結果を擦り合わせ、前者の中で会得した共同体〈心体知〉が後者の中でどのように体得されたかの議論を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R2,3,4年度はコロナ禍の影響で、祭りが中止されたり、大幅な規模の縮小や制度の変更が見られたため、当初の計画通りの撮影・分析ができなかった。「三夜講」(数え42歳に連なる3年代)内での共同体〈心体知〉の獲得過程を分析する予定であったが、一部の年代は祭りが中止されていたため、変化の過程が終えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度から少しずつ祭りが復活し、R5年度には完全にすべての行事が復活した。R6年度まで撮影を続けることにより、H29,30,R1年度内での変化とR4,5,6年度内での変化を比較できるようになる。この比較分析を通じて、当初予定していた共在感覚醸成のモデル化(全員)を行う。 仲間内での対立、年配層からの苦言、膨大な作業など自分たちだけで解決できない問題に対処するために、共同体〈心体知〉を同一にする他者を拠り所とする時、我も彼も物的世界の上で一繋がりであるという共在感覚に至ると仮定する。「三夜講」主要メンバーへの聞き取り調査や、仲間同士が集まる機会への参与観察も併用しつつ、2の結果を多角的・総合的に考察して、共在感覚が醸成される過程をモデル化する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、国内外での研究発表の機会が少なかったため。また、野沢出張についても、人数を制限したため次年度使用額が生じた。 令和6年度は、ほぼすべての学会や研究会がコロナ前の状態に戻り、現地開催される。そこで、対外発表を精力的に行い、研究成果を広く発信する。また、野沢の祭りも復活しており、当初の予定通りの収録を再開する予定であり、旅費等に使用する。
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