2020 Fiscal Year Research-status Report
New biorefineries: Extended use of plant biomass for microbial fermentation towards sustainability
Project/Area Number |
19KT0009
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
川口 秀夫 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命准教授 (50463873)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蓮沼 誠久 神戸大学, 先端バイオ工学研究センター, 教授 (20529606)
|
Project Period (FY) |
2019-07-17 – 2022-03-31
|
Keywords | Biomass / Sorghum / Biorefinery / Metabolism / コリネ型細菌 / Fermentation / Plant |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、セルロース系バイオマからの芳香族化合物発酵生産を飛躍的に効率化するために、搾汁液の発酵促進作用メカニズムを解明して植物本来の有用性を活かした新しい農資源の開発に応用し、芳香族化合物生産のための新しい基盤技術の確立を目指している。この目的を達成するために、モデルバイオマスに搾汁液含量が高いイネ科植物ソルガムを使用して、以下の3つの研究課題を実施している。(1)高い発酵促進作用とセルロースの糖化効率を示すソルガム品種の選抜;(2)搾汁液による促進作用機序の解明と高生産発酵性菌の開発;(3)セルロース糖化液と搾汁液を混合した“再構成バイオマス糖液”の利用による芳香族化合物発酵高生産プロセスの開発。以上の課題研究を通じて、医薬品や高機能ポリマーの原料となる芳香族化合物をバイオマスから効率的に生産する次世代の農資源利用に資する新しい生産技術体系基盤を確立する。 本年度は、課題1「高い発酵促進作用とセルロースの糖化効率を示すソルガム品種の選抜」では、小課題1.1. ソルガム搾汁液の成分分析を実施し、発酵性糖(ショ糖、グルコース、フルクトース)の他に(アミノ酸・ビタミン類)の濃度を測定した。また、課題2「搾汁液による促進作用機序の解明と高生産発酵性菌の開発」では、小課題2.2. 高生産菌の開発を実施し、搾汁液と酵素糖化液を効率的に利用できる3,4-AHBA発酵生産を開発した。さらに、課題3「セルロース糖化液と搾汁液を混合した“再構成バイオマス糖液”の利用による芳香族化合物発酵高生産プロセスの開発」では、小課題3.1.“再構成バイオマス糖液”の作製を実施し、搾汁液と残渣由来酵素糖化液の混合液である、再構成バイオマス糖液が3,4-AHBA発酵生産に与える影響を評価した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目にあたる本年度は、全課題(課題1~3)の一部をそれぞれ実施した。 課題1「高い発酵促進作用とセルロースの糖化効率を示すソルガム品種の選抜」では、複数のソルガム品種を材料に、搾汁液の糖組成と微量成分を比較した結果、微量金属含量に大差が認められなかった一方で、発酵性糖組成(ショ糖、グルコース、フルクトース含量)とビタミン類の含量に顕著な差が認められた。また残渣から調製した酵素糖化液の糖組成と発酵阻害物質の含量を比較した結果、発酵阻害物質含量が品種間で大きく異なることを明らかにした。これらの成分分析の結果をもとに、再構成バイオマス糖液を調製する品種を選抜することができた。 課題2「搾汁液による促進作用機序の解明と高生産発酵性菌の開発」では、生産菌は搾汁液を構成する複数の糖類を同時または連続的に消費できず、3,4-AHBA生産が効率的に行われない“カタボライト抑制”の問題が生じた。そこで、複数糖を同時利用できる第2世代生産菌の開発(小課題2.2.)を先行させ、開発した第2世代生産菌を用いてメタボローム解析による代謝促進作用点の特定(小課題2.1.)するよう、研究計画の順序を変更した。候補代謝改変株の作製とスクリーニングにより、複数糖を同時利用できる第2世代生産菌を開発し、次年度にメタボローム解析を行う環境を整えることができた。 課題3「セルロース糖化液と搾汁液を混合した“再構成バイオマス糖液”の利用による芳香族化合物発酵高生産プロセスの開発」では、作製した第2世代生産菌を用いて、搾汁液、酵素糖化液、再構成バイオマス糖液の3種の糖源からの3,4-AHBA発酵生産を比較した。その結果、搾汁液と酵素糖化液では発酵産物のプロファイルが大きく異なること、再構成バイオマス糖液が最も高い3,4-AHBA生産性を示すことを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる次年度では、研究計画の一部見直しにより、すべての課題における目標達成を目指す。 課題1「高い発酵促進作用とセルロースの糖化効率を示すソルガム品種の選抜」については、すべてのデータ取得を完了しているが、糖化率の増加に関与する成分または分子(易糖化性マーカー)の探索を、引き続き行う。 課題2「搾汁液による促進作用機序の解明と高生産発酵性菌の開発」については、本年度作製した第2世代株を用いて、予定を再送したメタボローム解析を行い、搾汁液による代謝促進作用点の解明に取り組む。 課題3「セルロース糖化液と搾汁液を混合した“再構成バイオマス糖液”の利用による芳香族化合物発酵高生産プロセスの開発」については、“再構成バイオマス糖液”による3,4-AHBA生産促進効果を解析する。最適な混合比率を決定するとともに、最適化した再構成バイオマス糖液を原料とする3,4-AHBAの高濃度生産を検討する。
|
Causes of Carryover |
コロナ過における海外からの資材供給制限により、予定していた遺伝子発現解析の一部を実施できなかったため、使用額に余剰が生じた。 現在はキット類の供給も比較的改善しており、見送った計画は2021年度に実施する予定である。
|