2019 Fiscal Year Research-status Report
機械学習による木材の性質からの木材・プラスチック複合材の高速高精度性能予測
Project/Area Number |
19KT0018
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岩本 伸一朗 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (10612179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 淳司 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (40183842)
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Project Period (FY) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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Keywords | 木材 / ウッドプラスチック / 機械学習 / 機械的性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
WPCは、木粉をポリプロピレン(PP)等のプラスチックに充填した複合材料である。主要な用途はデッキ材料で、国内だけでも年間4万トンの需要がある。WPCには、木材を粉砕した木粉を用いるため、現在燃料として利用されているような間伐材や端材でも原料として利用可能である。一方で、工業製品としてWPCの性能を担保するためには、樹種が明らかで形状がそろっており、月100トンの規模で安定供給される木粉のみが原料に用いられる。そのため、少量偏在型の国内木質資源を原料に用いることは現状困難となっている。 木材の構成成分や構造に由来する化学・物理的性質や用途開発に関しては、多くの研究が行われてきた。従来の木材利用に関する研究手法では、分析的に木材の特性を解析し、それを生かした材料開発が行われてきた。しかし、木材には樹種間あるいは同一樹種においても材質にばらつきがあることが避けられない。そのため、多様な木材それぞれについて実験を行い、用途を決定することは、実際には実現困難である。つまり、木材のばらつきを受け入れる技術は未だ確立されていない。この状況を打破するため本研究では、木材とWPCの性質の間に高い相関関係を見出し、原料から製品の性質を高速かつ高精度に予測することを目的とする。 今年度は、異なる木材からWPCを作製した。原料木材については構成成分、結晶化度、粒子形状、近赤外スペクトル等を測定した。WPCについては、ヤング率、強度、破壊ひずみ、izod衝撃強度、吸水率、色を測定した。さらにこれらの木材とWPCの性質を比較し相関関係を見出すことに取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の針葉樹、広葉樹、非木材それぞれから、0.2 mm径の木粉を作製した。木粉40%、ポリプロピレン58%、無水マレイン酸変性ポリプロピレン2%の混合物をバッチ式ニーダーを用いて溶融混錬した後、射出成型によりWPCを作製した。WPCの物性は、3点曲げ試験、衝撃試験、60度水浸漬試験、吸水試料の3点曲げ試験を行った。非木材であるOPEFBとスウィッチグラスから作製したWPCは、その他と比較して明らかに曲げ強度は小さく、また、浸漬により多量の水を吸収し強度は大幅に低下した。針葉樹と広葉樹から作製したWPCの曲げ強度の原料間での変動は、乾燥時で8%、含水時で22%であった。木材の特性からWPCの物性を予測するためにはWPCの物性変動は大きい方が望ましいので、変動の大きな吸水時の物性を予測対象とすることが有効であると考えられる。WPCはデッキ材として屋外で用いられることが多いので、吸水時の物性は実用上においても重要である。 原料木材の構成成分、結晶化度、粒子形状、近赤外スペクトルの測定を行った。近赤外スペクトルと構成成分には高い相関関係見られた。以上のデータが得られたため、次年度に先駆けて原料木材の近赤外スペクトルからWPCの性質の回帰と予測を行った。その結果、WPCの吸水率と含水時の曲げ強度は、両者とも近赤外スペクトルを回帰に用いて、それぞれR2は0.84と0.72という比較的高い精度の予測が可能であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらなるデータの取得を行い、多変量解析や深層学習の機械学習手法を用いて、予測精度の向上に取り組む。予測モデルの構築はプログラミング言語Pythonで提供されているscikit-learnを用いる。方法としては、データをモデル構築のためのトレーニングデータと予測のためのテストデータに分割する。データ分割はLeave-one-outという、全サンプルのうち1つを選び、それをサンプル数回繰り返す手法を検討する。さらに、予測モデルによってはパラメーターを適切に設定する必要があるため、トレーニングデータからLeave-one-outによりヴァリデーションデータを分離しパラメーター設定に用いた。 また、現状では木材粒形解析は、顕微鏡画像を画像解析することで、木材粒子一つ一つの形状データを取得している。この手法ではデータ数はある程度の量を得ることが出来るが、現状では形状値の平均値を粒子データとして用いている。使用している木材の粒径は幅広いために、平均値のみにより各木材の特徴を表すことが困難であると考えている。そのため、新たな画像処理方法により、本研究の予測に適した木材形状の特徴値を得る方法を検討する。
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Causes of Carryover |
物品費については、手法の最適化を行う事で現状の計算機で研究遂行に支障がなかった。今後データの増加に伴い計算能力の増強が必要となると考えられるので、必要な時期に計算機を購入する。人件費に関しては、業務遂行に適した人材が見つからなかったため雇用を見送ったが、木材の構成成分分析については別テーマで実施している研究結果を用いることが可能であった。次年度は人材が見つかり次第雇用する予定である。
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