2023 Fiscal Year Annual Research Report
Polysemous Coexistence of Orality in Indian Ocean Creole Folktales
Project/Area Number |
19KT0025
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
小田 淳一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (10177230)
|
Project Period (FY) |
2019-07-17 – 2024-03-31
|
Keywords | クレオル / 民話 / オラリティー / インド洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
レユニオン島で採取したレユニオン・クレオル語の民話テキストについて,それぞれの語り手特有の表現に関わる物語要素を「ローカル性」,「現前性」,「修辞性」,「音楽性」の4種の範疇に分類し,それらの要素がどのように結びついてひとつの語りとなっているかを前年度に引き続いて分析した。前年度まではそれらの要素群を連鎖状のデータ構造として分析を行っていたが,二次元の連鎖構造では各要素と範疇との対応付けが一意的な選択にならざるを得ず,特定の表現が物語要素の複数の範疇に「同時に」該当する場合を考慮に入れるには,データ構造そのものと処理ツールの再考が必要となった。そこで今年度は,物語要素の4種の範疇の下により具体的な下位範疇を設定した。例えば,「共在性」の下位には間投詞や呼びかけ,「修辞性」の下位には個別的な修辞技法である反復や列挙など,また「ローカル性」の下位には民俗語彙や特定の人物名などである。そして,物語要素の二次元連鎖構造においては反映されなかった,語りの多義性=多重性を,ネットワーク可視化ツールであるCytoscapeを用いて分析し,その結果を「Cytoscapeによるクレオル民話口演の多次元構造の視覚化」というタイトルで人工知能学会第2種研究会ことば工学研究会の第72回研究会(2023年9月)において報告した。 研究期間全体を通じての成果としては,本研究課題が採択された特設分野「オラリティーと社会」と極めて密接な関係にある民話口演というジャンルのデータを様々な角度から分析し,オラリティーの多義性を顕現させる具体的な要素群の抽出とそれらの分布・連鎖構造を,少なくともインド洋のクレオル民話という領域において提示できたことが挙げられる。また,民話の分析を行うと共に,日本では初めてまとまった数のレユニオン民話を翻訳して二点の民話集を刊行したことも成果のひとつである。
|