2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating temporal coordination dynamics that form individualities of ensemble performances
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19KT0030
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岡野 真裕 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (90809956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
紅林 亘 滋賀大学, データサイエンス教育研究センター, 助教 (70761211)
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Project Period (FY) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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Keywords | 合奏 / 対人間協調 / 結合振動子 / 協調ダイナミクス / complexity matching |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は主に「研究3:実際のヒトのパラメータの収集と影響因子の特定」について、一定の進展が得られた。以前の研究では、メトロノーム無しで一定のリズムを維持して電子ドラムを叩く課題(リズム維持課題)を2人組で互いの同期も維持しながら行うと、単独で行う場合と比べ、テンポが意図せず速くなりやすいことが明らかになっていた。これには同期を維持するための双方向的なタイミング調節のプロセスが関わっていると考えられた。これを踏まえ2019年度には、合わせようとする意図を弱めることで、意図しない加速を抑制できる可能性について検討する実験を行った。実験では2人組リズム維持課題において、「全てのタップを合わせようとする」「4回に1回だけ合わせようとする」「8回に1回だけ合わせようとする」の3条件を設定し、テンポの平均値を比較した。その結果、予想に反して、合わせる機会を少なくした(=意図を弱めた)条件ほど、意図しない加速の程度が甚だしくなるという結果が得られた。同期のずれの大きさについて分析したところ、合わせる機会を少なくしたことにより、「4回に1回」「8回に1回」の条件では、ずれの大きさが無意識的なタイミング修正が最も強く行われる領域付近に移動していたことが明らかになった。また他の先行研究において、リズム維持課題に類する課題を行った経験がないものでは、無意識的なタイミング調節を抑制することが難しいことが示唆されていた。本研究での実験参加者も類似課題への参加経験がないものばかりであったことから、これらの相互作用によりこの結果がもたらされたと考えられた。このほか、以前の研究で提案していた数理モデルの理論解析にも進展があり、課題を行う参加者同士の結合の対称性や、タイミングのばらつきの大きさが、加速度合いの大きさと関係していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初、バーチャルパートナーシステムの実装と、数理モデルに基づいたパラメータ推定法の確立を目指していた。しかし研究代表者・研究分担者とも雇用原資のプロジェクトが当初の見通しより多忙になったため、それらの実現には至らなかった。したがって、ある程度の進展は得られ、研究3と関連する予備実験は実施できたものの、やや遅れていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルス感染症の流行がある程度収束するまで実験の実施が困難になることが予想されるため、当面はバーチャルパートナーシステムの実装と、数理モデルに基づいたパラメータ推定法の確立、およびweb・スマートフォン上で動作する実験アプリケーションの開発・運用を中心に行う。
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Causes of Carryover |
当初予定よりエフォートを本課題に割けなかったことと、学内の研究助成を獲得できたため、行動実験に使用する物品をそちらの予算で購入ししたことにより、次年度使用額が生じた。実験アプリケーション開発の外注、または論文のオープンアクセス費用など、研究を推進するために有効活用する。
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