2019 Fiscal Year Research-status Report
地球温暖化に適応するための海藻類の新品種開発手法の確立
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19KT0038
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
西辻 光希 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (60770823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 俊幸 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (00814526)
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Project Period (FY) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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Keywords | 海藻育種 / 共生バクテリア / ゲノム / モズク類 / 褐藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では4種の褐藻モズク類(ナガマツモ科のオキナワモズク、フトモズク、イシモズク、モズク科のモズク)をモデルとして、地球温暖化などの異なる環境に対応可能な海藻類の作出を目的とする。緑藻や陸上植物ではバクテリアとの共生は正常生育や宿主の性質に変化をもたらすことが知られているため、褐藻とバクテリアの共生関係に着目して、新品種の作出に必須となる技術基盤の整備を目指す。 オキナワモズクとイトモズクのゲノム配列はすでに解読されている。そこでまずNBRPバイオリソース藻類からフトモズク、イシモズクを入手し拡大培養することに成功した。それらからゲノムDNAを抽出し、各種ライブラリーを作成したのち次世代シーケンサーでシーケンスを行い、塩基配列情報を取得することに成功した。これらのデータを解析することにより、未解析の部分は残っているものの本研究に必須となる遺伝学的研究基盤の構築がほぼ完了した。また、次世代シーケンサーで得られたゲノムDNAの塩基配列を再解析することにより、バクテリア由来配列を複数見出しことができた。モズク類の培養には滅菌海水を用いていることから、これらバクテリアは外部から混入したものではなく、モズク類の細胞内外に存在している可能性が高いと考えられた。 モズク類の細胞内外にバクテリアの存在が示唆されたため、まずはオキナワモズクの盤状体およびイトモズクの糸状体を用いてバクテリアの分離培養を行った。これにより複数のバクテリア株を分離することに成功し、うちいくつかはリボソーム16S配列の解読にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で必須となる遺伝学的基盤である褐藻フトモズク、イシモズクのシーケンスデータの取得に成功し、それらのゲノム解読はほぼ完了させることができた。さらに安定的に研究室内で培養することもできている。しかしながら拡大培養および安定培養の条件検討に時間を要したため、ゲノムの解読はできたもののRNA-seqや遺伝子予測などは完了しておらず、当初の初年度計画からやや遅れている。これらの遅れは次年度の研究と並行することができ、かつすでに着手しているため、研究全体としては問題とはならないと考えられる。 各種モズク類と共生関係にある可能性のあるバクテリアの分離も必須となるが、オキナワモズク、イトモズクにおいて成功しているため、フトモズク、イシモズクでも同様に分離できると考えられる。分離したバクテリアの種同定が必要となるが、すでにいくつかの株では完了しており、同様の手法で解析できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度には2種モズク類(イシモズク、フトモズク)のゲノム解読を完了させる。また、モズク類からのバクテリアの分離、種同定と機能推定、さらに無菌モズク類への新奇バクテリアの感染実験をおこなう。 2種モズク類ゲノムの解読はほぼ完了しているが、RNA-seqや遺伝子予測、遺伝子アノテーションなどに着手できていない。それらバイオインフォマティクス的な解析を行い、ドラフトゲノムの構築を完了させる。 それと並行してバクテリアの分離は4種のモズク類全てについて行う。分離したバクテリアのリボソーム16S配列をサンガーシーケンス を用いて決定し、種同定を行うと同時にそれらの機能の推定をバイオインフォマティクス的に行う。また、無菌化したモズク類に、異なる種から分離されたバクテリアを感染させた後高温暴露し、生存するバクテリアの組み合わせを同定する
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Causes of Carryover |
シーケンスおよびライブラリー作成キットを従来のものから見直しを進めた結果、おおよそ半分の金額で見込んでいたデータ量を得ることができた。また、生体サンプルが十分量得られるまでに時間を要したため、年度内にRNA-seqを行うことができなかったため、これらの購入費用が含めれていない。そのため次年度には繰越金を用いてRNA-seqを行う予定である。 購入予定だったクールインキュベータについても廉価製品の発売が開始されたことと、必要台数が確保できたため、当初よりも少ない金額での購入となった。一方、分離したバクテリアは長期間保存することが困難なことも判明したため、無菌モズクへの感染実験には定期的なバクテリアの分離が必要となる。分離の回数が増えると、サンガーシーケンスを行う回数も増えることが見込まれるため、これら繰越金も含めて支出する予定である。
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