2019 Fiscal Year Research-status Report
Bitcoin型競争的情報拡散に基づく合意形成における情報拡散妨害のリスク分析
Project/Area Number |
19KT0045
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
笹部 昌弘 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10379109)
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Project Period (FY) |
2019-07-17 – 2022-03-31
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Keywords | 競争的情報拡散 / Bitcoin / 情報拡散妨害 / リスク分析 / 感染症伝播モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
暗号通貨システムBitcoinでは,悪意のあるユーザを含む不特定多数のユーザ間での取引台帳(ブロックチェーン)に対する自律分散合意形成を実現している.新たなブロック(取引情報の集まり)の生成はマイナーと呼ばれる特別な端末により行われるが,その際,過去のブロック情報と高難度なパズル的計算が必要となる.また,ブロックチェーンの追記に成功したユーザのみがシステムと取引利用者から報酬を得られる.その結果,ネットワークを介したユーザ間での情報拡散競争とブロック生成競争が発生し,これがブロックチェーンの耐改竄性に寄与している. ここで,情報の正常な拡散はブロックチェーンの信頼性実現に必須となるが,Bitcoinプロトコルで採用されているプル型情報伝播に対するタイムアウト制御の悪用により,隣接端末間の情報伝播の妨害が比較的容易に実現できることが知られている.本研究では,特定のマイナーが複数の攻撃者と結託し,競合するマイナーの生成したブロックの拡散を妨害する,ブロック拡散妨害攻撃という新たなリスクに着目している. 本年度では,ブロック拡散妨害攻撃の基本特性の分析のために,感染症伝播モデルに着想を得た新たな数理モデルを確立した.さらに,より詳細な分析のために,Bitcoinプロトコル及びブロック拡散妨害を再現したシミュレータを開発した.解析とシミュレーション評価により,攻撃者の数や位置,ネットワークの形状がブロック拡散妨害攻撃のリスクに与える影響を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進んでおり,得られた研究成果の一部は,国際会議1件,研究会4件の形で対外的に発表している.特に,国際会議では招待講演,研究会の内1件は依頼講演の形でそれぞれ実施しており,対外的にも研究の重要性が認知されつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進に向けては大きく二つの方策を想定している.一つ目は,数理モデルの拡張である.初年度に確立した数理モデルでは,同一の攻撃者から複数回攻撃を受ける可能性を含む形となっており,これは拡散妨害の最大リスクの評価に対応する.一方,Bitcoinシステムでは,各ノードが他のノードとの過去の通信履歴を保持できる.この点を考慮し,同一攻撃者からの攻撃受信回数を高々1回に抑えた場合の数理モデルを新たに確立し,そのリスク評価を行う. 二つ目は,拡散妨害攻撃への対策の検討である.初年度においてもその検討を一部開始しているが,攻撃への対策としては,攻撃からの早期復旧と攻撃の回避の両面から取り組む必要がある.前者には,迅速なブロック取得と攻撃の早期検出を両立するための適切なタイムアウト制御が,後者には,ブロックの生成・拡散が継続的に行われる特性に着目した,過去の通信履歴に基づく適切な取得先ノードの選択がそれぞれ重要な役割を担うものと期待される.
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Causes of Carryover |
導入を予定していた計算機の発売時期の遅れによるものであり,次年度中にその購入費用の一部に充てる予定である.
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