2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノグラフェンの端の精密科学:エッジ状態の解明と機能
Project/Area Number |
20001006
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
榎 敏明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10113424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 和之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (80334514)
若林 克法 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究員 (50325156)
横田 泰之 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 助教 (00455370)
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 電子・電気材料 / 磁性 / ナノ材料 / 表面・界面物性 |
Research Abstract |
(1)グラファイトにArスパッタリングでナノホールを空け、さらに水素終端し、超高真空STM/STS観察を用いて、孔形状に依存するグラフェン端の電子構造の解明を行った。この結果、水素終端構造を反映した多様なエッジ状態の構造が観測され、DFT計算による解析をおこなった。エッジ状態に1水素化、2水素化、水素付加への立体障害による影響が見出された。また、120°、60°の角度をなす2つのジグザグ端でのエッジ状態分布に差があることが明らかとなった。 (2)酸化グラフェンの還元により得られたグラフェンナノ構造のSTM、AFM観察により、電子分布の形による効果を調べた。その結果、アームチェア端を有するナノ構造では定在波が観測され、また、ジグザグ端を有するナノ構造では、電子の非局在状態が観測された。この結果はClarの芳香族則を満足するものである。 (3)ナノグラフェン端のエッジ状態と端の化学環境をNEXAFSにより調べた。熱処理を進めると、酸素を含む官能基が次第にとれ、エッジ状態の寄与の変化がみられた。また、HNO_3との電荷移動により、エッジ状態の占有率が減少することが明らかとなった。 (4)グラフェンにArスパッタリングによりナノ孔を空け、FET測定により、エッジ状態の電子輸送への効果を調べ、磁気抵抗から弱局在の効果の存在を明らかにした。 (5)アームチェア・グラフェンナノリボンに対する強結合模型に関して、エネルギー固有値および波動関数を転送行列法によって導出した。また、ディラック点近傍の波動関数が、アームチェア端近傍で超周期的な構造を有する.ことを示した。 (6)グラフェンのコーナーエッジ構造における電子状態を、強結合模型によって、数値理論解析を行った。特に、120度のコーナーエッジでは、ジグザグ・エッジ状態が局所的に消失することを指摘した。 (7)イオン液体水溶液とグラファイト電極との界面に生じるステップ構造の生成条件を電気化学FM-AFM観察により見いだした。イオン液体モル分率が0.05という希薄条件下でも安定な層構造が形成されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
STM/STS、AFMにより、グラフェンの端の幾何学構造、化学的環境による依存性が系統的に明らかとなり、当初、注目していたエッジ状態の幾何学依存性以外に、電子波の干渉効果による定在波とエネルギーギャップの存在が明らかにされ、端の電子構造の包括的な把握をすることが出来た。また、NEXAFSでのエッジ状態の解明は強力な手段であることが分かり、構造、化学環境を変えながら、多様なエッジ状態の存在を明らかにすることが出来た。さらに、酸素分子のエッジへの付着がエッジ状態スピンに影響を与え、大きなマイクロ波印加効果が観測された。これは予測していなかった展開である。
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Strategy for Future Research Activity |
エッジ状態、電子波干渉のSTM/STS、AFMによる解明に合わせて、DFTを用いた理論計算を行い、グラフェン端の幾何学構造、化学環境依存性の包括的な解明を行う。また、NEXAFSを協力な手段として、端の電子状態の化学環境による依存性を明らかにする。これらの結果を総合し、グラフェン端の電子構造の分子科学的理解を完成する。また、エッジ状態スピンと伝導電子との相互作用はまだ十分な理解のされていない問題であり、Arスパッタリングと端の水素化を用いて端構造をきちんと定義したグラフェンを作製し、FETとその磁場印加効果の実験を通して、両者の相互作用によりもたらされる新現象(Kondo効果等)の発見と解明を行う。また、予備実験から、グラフェンの酸化により強磁性的相互作用が発生する結果が出ている。系統的な実験を行い、ナノグラフェンを基礎にした磁性発現を明らかにする。
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Research Products
(94 results)
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[Journal Article] Raman characterization and UV optical absorption studies of surface Plasmon resonance in multishell nanographite2011
Author(s)
V.Yu.Osipov, A.V.Baranov, V.A.Ermakov, T.L.Makarova, L.F.Chungong, A.I.Shames, K.Takai, T.Enoki, Y.Kaburagi, M.Endo, Y.A.Vul
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Journal Title
Diamond and Related Materials
Volume: 20(2)
Pages: 205-209
DOI
Peer Reviewed
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