2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20002001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松沢 哲郎 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60111986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (70237139)
田中 正之 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (80280775)
林 美里 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (50444493)
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Keywords | 霊長類 / チンパンジー / 認知発達 / 野外実験 / 直観像記憶 / 対面検査 / 親子関係 / 祖母 |
Research Abstract |
本研究は、チンパンジーを対象に、「思春期から青年期に到る時期」、すなわち「子どもからおとなになる過程(8歳から12歳の時期)」での認知発達に焦点をあて、心の発達の全体像を描き出すことを目的とした。チンパンジーの子どもを母親から隔離せず、なかまと集団生活する個体を主な研究対象とした。また、野生チンパンジーの生態と行動の研究も同時並行し、実験研究と野外研究を融合させた新たなアプローチをめざした。京都大学霊長類研究所の1群3世代14個体と、アフリカ・ギニアのボッソウの野生群3世代13個体を主たる研究対象にした。「親子関係やコミュニティーのなかま関係を背景に、チンパンジーの認知機能の実態とその制約とは何か」、逆に「人間を特徴づける認知機能とは何か」を明らかにすることに意義がある。主対象の3組の親子において、子どもが8-12歳になる時期なので、子どもからおとなへのダイナミックな認知的な飛躍を実証的に捉えることを試みた。本年度の研究において、3つの実験場面を確立した。1)社会的場面:複数個体を対象にした場面、2)対面検査場面:人間と同様な対面検査場面、3)個体学習場面:1個体を対象とした「タッチパネル付きコンピュータをもちいた学習場面」である。子どもからおとなになる過程に特有の系列情報処理、記憶過程、概念形成、注意機構、情動過程について明らかにした。具体的には、視線の検出、直観像的記憶の消失、階層的認知の深まりを調べた。また、野外実験と行動観察を組み合わせて、ギニアの野生チンパンジーを対象にしたフィールドワークを実施し、親子関係と道具使用など発達加齢現象を検討した。チンパンジーにも母子の深い絆があるとともに、祖母の役割が存在する事例を見つけた。さらに、人間、テナガザル、ニホンザル、新世界ザル、さらにはイルカ類を対象にした種間比較を通じて認知発達とその進化的基盤の研究をおこなった。
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Research Products
(22 results)