2008 Fiscal Year Annual Research Report
がんの発生と進展の過程におけるNF‐κBの標的制御因子IκB‐ζの役割
Project/Area Number |
20012005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牟田 達史 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 教授 (60222337)
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Keywords | 炎症 / 発がん / nuclear factor-κB / 転写因子 / IκB-ζ / 転写制御因子 / 阻害剤 / スクリーニング |
Research Abstract |
慢性の炎症が基盤となってがんが発生する。炎症応答においては、転写因子Nuclear Factor(NF)-κBによる遺伝子発現が主要な働きをしているが、多機能転写因子であるNF-κBによる選択的遺伝子発現機構については、不明な点も多い。本研究では、以下のように、研究代表者らが発見したNF-κBの新規転写制御因子であるIκB-ζの発がんにおける機能解析及び、その発現の人為的制御に向けた阻害剤のスクリーニングを行った。 まず、IκB-ζ遺伝子欠損マウスで観察される慢性炎症症状が、がんに移行するか否か観察したが、specific pathogenfree(SPF)環境下で飼育したIκB-ζ遺伝子欠損マウスでは、発がんは観察されなかった。一方、獲得免疫系の細胞を欠損するRag2遺伝子欠損マウスとの交配によって得たIκB-ζ/Rag2二重遺伝子欠損マウスでは、慢性炎症が消失する一方、これまでに得られた4個体中、2個体で腫瘍の発生が観察された。この結果は、自然免疫系の選択的遺伝子発現機構、あるいは獲得免疫系単独の欠損では、がんは生じないが、両者の欠損によって、がんが発生することを示しており、両者の協調した発がんの抑制機構の存在が明らかになった。また、化学療法基盤情報支援班提供の標準阻害剤キットを活用して、IκB-ζの転写後制御機構を介した発現誘導機構の阻害剤をスクリーニングした。結果、複数の薬剤が、NF-κBの活性化を阻害することなく、IκB-ζの転写後制御系を特異的に阻害することが明らかになった。この結果は、種々の応答に必須の役割を果たす多機能転写因子であるNF-κBの活性化に影響を与えることなく、IκB-ζの発現を制御することが可能であることを示しており、慢性炎症、さらには炎症によるがんの発生・進展・転移等の新たな制御の可能性が示された。
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