2008 Fiscal Year Annual Research Report
腸管上皮増殖・分化におけるエピジェネティック制御機構解明とその発がん研究への応用
Project/Area Number |
20012021
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山田 泰広 Gifu University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70313872)
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Keywords | 大腸発がん / エピジェネティック異常 / DNAメチル化 / Wnt pathway / 未分化性維持 |
Research Abstract |
DNAメチル化は、哺乳類エピジェネティック制御の重要な因子である。我々は、現在までに、家族性大腸腺腫症のモデルマウスであるApc Minマウスの大腸発がんには少なくとも二つの異なるステージが存在することを報告してきた。さらにApc遺伝子のLOHがその最初の発がん過程に関与しており、DNAメチル化が後期発がん過程に重要な役割を果たすことを示してきた。本年度の研究では、DNA低メチル化マウス(Dnmtl hypomorphic mouse)を用いて、大腸発がんにおけるDNAメチル化の役割について詳細に解析した。DNA低メチル化マウスでは、大腸腫瘍におけるβ-cateninの蓄積量が減少することを明らかにした。β-cateninの蓄積量が減少した腫瘍細胞には、杯細胞の出現が散見され、分化状態が亢進していることが分かった。さらに分化傾向を示す腫瘍細胞では細胞増殖活性の著しい低下を伴っていた。以上の結果は、DNAメチル化が大腸腫瘍細胞における未分化性維持に重要な役割を果たしていることを示唆しており、未分化細胞の増生が発がんメカニズムの一つであることが予想された。 Histone-GFPマウスを用いて、大腸非増殖分化細胞と増殖未分化細胞の分別に成功しており、増殖未分化細胞では、canonical Wnt pathwayの活性が亢進していることが分かった。今回の研究で明らかとなったDNAメチル化とWnt pathway活性化との関連、さらには未分化性維持機構との関連は、発がんにおけるエピジェネティック制御異常の意義を示唆する重要な結果と考えられ、今後大腸以外の発がん過程においても検討を行う予定である。
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